2016年12月20日火曜日

研究紹介: PISA2015の結果と考察

12月15日に東京大学(本郷キャンパス)で行われた国際シンポジウムで発表したスライドを掲載します。

発表は「CRET/Benesseシンポジウム2016これからの日本の教育のあり方~ポスト2030を見据えて~」の中で、「PISA2015の結果と考察」と題して報告しました。


    1. YouTubeは以下よりご覧いただけます。右下の設定で「字幕」をオンにすると読み原稿が表示されます。(全編32分45秒)


 
  2. SlideShareは以下よりご覧いただけます。




    3. スライド資料はPDFでも提供しています。

シンポジウムの開催概要は以下の通りです。(詳細は教育テスト研究センターのウェブページをご覧ください。)

CRET/Benesseシンポジウム2016 これからの日本の教育のあり方~ポスト2030を見据えて~ 


特定非営利活動法人教育テスト研究センター(CRET)と株式会社ベネッセホールティングスは、これからの社会に必要な能力や資質をどのように育成し、評価するかというテーマを研究しています。 今回のシンポジウムでは、PISA2015の結果やPISA2018、新学習指導要領の方向などを踏まえ、その先の社会を生きるために必要な日本の教育のあり方と、それに向けて今何が必要かを考えます。

開催概要

日時: 2016年12月15日(木)13:00~16:00(開場12:30より)
会場: 東京大学 情報学環・福武ホール 福武ラーニングシアター(B2)
主催: 特定非営利活動法人教育テスト研究センター 株式会社ベネッセホールディングス

13:00~
◆報告 林 寛平(信州大学 助教) 「PISA2015の結果と考察」

◆基調講演 Joachim Funke(ハイデルベルク大学 教授) "Beyond PISA: Assessment of competencies needed for the future" 「これからの社会に必要な能力の測定について」

14:30~
◆パネルディスカッション
パネリスト:  岸 学(東京学芸大学 名誉教授)、白水 始(東京大学 教授)、Joachim Funke(ハイデルベルク大学 教授)、Jean-Paul Reeff(DIPF)、Patrick Newell(TEDxTOKYO共同創立者、東京インターナショナルスクール共同創立者、シンギュラリティ大学ジャパン創立者)、林 寛平(信州大学 助教)
ファシリテーター:  新井 健一(特定非営利活動法人教育テスト研究センター 理事長)

◆定員150名
主な対象者:教育研究者、教育行政関係者、その他教育関係者など

発表要旨

2014年、米英を中心とする100名近い研究者がPISAの中止を求める公開書簡をOECDに送った。その内容は、標準テストやランキングが各国の教育政策を近視眼的にし、教育現場にネガティブな影響を与えていると危惧するもので、瞬く間に世界中の教育関係者から賛同を集めた。PISAレジームがつくり出すグローバル・ガバナンス体制によって各国の教育政策が「同型化」に向かい、公教育の市場化を促進することへの懸念が教育関係者の間で高まっている。

OECDはこれに対し、PISAが教育政策を近視眼的にしたと示唆するものは何もないし、むしろ国際比較によって幅広い政策手段を提示していると調査の意義を訴えた。OECDはこの間、DeSeCoの見直し(Education 2030)やCBAの全面的な導入、各リテラシーの定義や測定方法の見直し等を行い、寄せられる批判に対応してきた。しかし、大規模国際アセスメントの意思決定や結果の流通過程はますます政治化しており、技術的な問題以外にも乗り越えるべき課題は尽きない。

このような議論の渦中にあって、PISA2015の結果が公表される。前回、世界でもトップクラスだった日本の成績は、その後の3年間でどのような変化が見られるのか。また、この結果をどのように政策に反映し、実践の改善につなげていくべきか。本発表では、同時期に公表されるTIMSSの結果との比較も交えてPISA2015の結果を分析し、日本への示唆を導出する。

本シンポジウムはJSPS科研費JP16H05960JP16K13521の助成を受けたものです。

2016年12月19日月曜日

研究紹介: 米ETSの次世代アセスメントの研究開発動向

 信州大学比較教育学研究室はベネッセ教育総合研究所との共同研究を通じて、新しい学びに対応した新しい評価方法に対する示唆を議論しました。

 アメリカのテスト開発機関であるEducational Testing Service(ETS)では、2007年より、CBAL(Cognitively Based Assessment of, for and as Learning、認知科学にもとづいた学習の、学習のための、学習としてのアセスメント)イニシアチブという長期的な研究開発に着手しています。これまでの標準テストのように生徒の達成度を測るだけでなく、テスト結果が学習や指導に役立つような設計にすること、またテストを受けること自体が教育的な経験になるようなものにすることを目指したプロジェクトです。そこには、学習科学の知見をとりいれたフレームワーク、熟達者の課題解決のプロセスを模した「シナリオ型テスト」という形式、また最新の技術の採用など、様々な工夫が見られます。

 CBALイニシアチブは、学習指導要領改訂や大学入試改革において唱えられている読解力・表現力・思考力の育成および評価方法に対して重要な示唆を与えています。また、日本のアセスメント研究開発における長期的また大規模な研究投資の必要性、認知・学習科学やテスト研究などの多分野の研究者の協働の必要性が浮かび上がってきます。

 本研究の概要については、以下のPDFファイルをご覧ください。

2016年12月16日金曜日

教育動向:次期教育長官にベッツィ・デヴォス



アメリカの教育動向(久原みな子)

トランプ次期大統領は、11月23日、次期教育長官にベッツィ・デヴォス(Betsy DeVos)を指名した。デヴォスは、バウチャー制度と学校選択制の支持者として知られ、1993年にはミシガン州ではじめてチャーター・スクールを許可する法律の成立を支援、その他にもGreat Lakes Education Project(GLEP)やAmerican Federation for Children (AFC)など学校選択制を推進する団体の創設や運営に関わり、活発なロビー活動を行ってきた。

1958年生まれ、ミシガン州出身のデヴォスは、地元のキリスト教系私立高校を卒業。同州にあるカルヴァン・カレッジで経営学と政治学を学んだ後、1982年から共和党の活動に参加し、1996年から2000年にはミシガン共和党委員長を務めた。夫のディック・デヴォスは、アムウェイ創業者の大富豪リチャード・デヴォスの息子であり、アムウェイを継承する親会社アルティコを引き継いだ後、ミシガン州知事選に出馬したが落選。その後も1989年に設立したディック&ベッツィ・デヴォス・ファミリー財団(The Dick & Betsy DeVos Family Foundation)などを中心に、2人は潤沢な資金を使って、教育、芸術、宗教、福祉、労働分野など、保守派の慈善活動、ロビー活動を幅広く行っている。今回の大統領選では、はじめジェブ・ブッシュを支持、その後マルコ・ルビオとジョン・ケーシックの支持を表明していたが、共和党におよそ3億円を寄付した。


2016年11月23日水曜日

教育動向:トランプ勝利をうけて各地で高校生がデモ

アメリカの教育動向(久原みな子)

11月8日に行われた大統領選挙の結果をうけ、米国各地で高校生によるデモが続いた。投票権が18歳からの米国では、高校生の大多数は投票できない。そのため、特にクリントン支持の強かった地域では、大統領選のあった火曜日以降、投票以外でかれらの意見を公に主張する手段として、多くの高校生が授業を欠席してデモに参加した。ワシントンDCでは、2000人を超える中高生が、プラカードを手にホワイト・ハウス周辺など市街を行進、選挙から約1週間後にもメリーランドなどでは、高校生のデモが続いた。
 
「トランプはわたしたちの大統領ではない」といった選挙結果に対する反発をプラカードに掲げる生徒もいる一方、ワシントンDCのデモに参加した高校生のように、選挙結果を尊重し、米国の分裂ではなく統一や団結を求めようと呼びかける主張や、選挙活動中にトランプ候補が発した様々な差別的発言に対するプロテストとして、選挙中から使われた「愛は憎しみに勝つ(“Love trumps hate”)」のメッセージを掲げる生徒、移民政策に反対し、多様性を求めてメキシコ国旗を掲げるといったパフォーマンスなどが見られた。

2016年11月15日火曜日

研修報告: オランダ・イタリア教育視察 7日目

欧州教育視察最終日。

今日は乗り継ぎ先のパリで観光の時間となりました。

時間の関係もあり、何人かの方とは一足先にお別れとなりました。
「ありがとう」という言葉が飛び交い、寂しいながらも笑顔でお別れすることができました。

電車を降りて、地上に出たときに広がった景色。
憧れのセーヌ川でした。
世界遺産にも登録されている素敵な場所です。
オルセー美術館、河岸を超えて右手にルーブル美術館...
なんと贅沢なことでしょう。
歩いているだけで幸せとは、まさにこのことですね。

あいにく、スケジュールの都合で中には入れませんでしたが、ピラミッドを写真に収めることができてよかったです。
また必ず戻ってきたいと思いました。


次もこれまた有名な場所。
そう、エトワール凱旋門です。
人で溢れかえっており、みなさん雨ニモマケズ、写真をパシャパシャ。
近くで観るとその迫力に圧倒されます。
こんなに素敵なものが拝めるなんてナポレオンに感謝です!

遅めのランチに、人生初めてのフィッシュ&チップスをいただいた後は、シャンゼリゼ通りでお買い物。
思い思いの時間を過ごしました。

最後はエッフェル塔。
もちろん最上階まで昇りました。
残念ながら天候が悪く、頂上からは何も見えませんでしたが、私は高所恐怖症だったので不幸中の幸いでした。(それでもとても怖かったのですが...)
堂々とした立ち振る舞いと、繊細な鉄骨の骨組みの美しさはため息が出るほどでした。
ライトアップのエッフェル塔も見ることができ、しっかりと目に焼き付けた後でその場を後にしました。

その後は12時間かけて無事に帰国しました。
最後までハプニングはありましたが、全員が元気に帰ってこられたことが何よりでした。

この一週間、目で見て、肌で感じて、実際にやってみてたくさんの事を考え、経験しました。
楽しいことはもちろん、自分がまだまだ勉強不足であることを思い知らされ、悔しいこともありました。
今回の視察旅行を経験で終わらせることなく、残りの大学生活、卒業してからに生かしていけるよう、自分なりに模索していきます。

初めての海外で、慣れないこともあり、迷惑もかけましたが、その都度、周りの人にたくさん支えていただきました。
感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にありがとうございました。

(担当: 上原真代)

※本事業は、信州大学知の森基金を活用したグローバル人材育成のための短期学生海外派遣プログラムの助成を受けて実施されています。


2016年11月13日日曜日

研修報告: オランダ・イタリア教育視察 6日目

欧州教育視察6日目です。


今日はREMIDAという施設とOROLOGIOという児童館、ROSA GALLEOTTI幼稚園に行きました。

REMIDAでは廃材を利用したアート教育を行っています。
日本では廃材や不良品はすぐにリサイクルやゴミになってしまいますが、ここではそういった物に価値を見出す活動をしていました。
はじめは暗い倉庫などをイメージしてみましたが建物内は太陽光も入り多くの材料が綺麗に整頓されていました。

次に向かったOROLOGIOでは日本の児童館との違いを直に感じました。
レッジョ・エミリア市では児童館などの教育にも力を入れており、どの部屋にも学びを意識した工夫がされていました。
例えばボードゲームも、それが誕生した歴史、政治背景、科学的な学びをすることができます。
さらにプログラミングやロボットを作るなど先端のデジタルの遊びができます。
日本とはだいぶ異なり、児童館は遊びと学びが密接な関係にありました。
こういった施設が日本にもあれば子どもの好奇心や学ぶ意欲が高まるように思いました。

ROSA GALLEOTTI幼稚園では貴重なレッジョ・エミリア・アプローチの現場を見ることができました。
テーマや子どもの実態に合わせて実に緻密で繊細な配慮や工夫、教材の用意がされていました。
異年齢教育の難しさと良さ。
施設の様子のほとんどが日本とは異なり、この教育にさらに興味を抱くきっかけになりました。

夜は全員でお別れを惜しみながら夕食会を行いました。
美味しいチーズや生ハム、パスタなどをいただき幸せな気持ちでした。
また、私が誕生日だったことからサプライズでケーキが!!本当に嬉しく、美味しかったです♪

これにて一週間のすべての視察を無事に終えることができました。
明日はイタリアともおさらばです。
美味しい日本食が私たちを待ってますね。
安全に最後まで楽しく過ごして帰りたいと思います。

(担当: 井上楓)

※本事業は、信州大学知の森基金を活用したグローバル人材育成のための短期学生海外派遣プログラムの助成を受けて実施されています。

2016年11月12日土曜日

EDU-JPN: School Activities - Finding a balance between work and play

Education in Japan (Natalie Collar)

For many children in Japan, the end of elementary school is no sad affair. Sure, they will have to start wearing uniforms and will certainly have to study harder upon entering junior high school, but these unfavorable truths are usually masked by the novelty of extracurricular activities. Some may wonder just how the anticipation of entering junior high school is created, but it becomes clear when one considers a very special field trip 6th grade students take.

野球部

It is traditional for junior high schools to invite sixth grade students from feeder schools to experience a day in the life of a middle school student. As a part of this experience, students, and parents who choose to attend, observe various classes, get a tour of the school, and are welcomed to join club activities after school. Many students leave these visits with less uncertainty and more anticipation than they arrived with, and they can hardly contain their excitement for the beginning of junior high school. 

From sports to arts and music, junior high school students have the choice to join a variety of clubs. Although schools in other countries allow their students to participate in multiple activities throughout the school year, students in Japan are typically restricted to choosing one and only one club to join throughout the three years of junior high school. While western countries may look down on this limitation—most schools in the United States allow students to participate in up to three extracurricular activities every school year—the rationale behind students choosing and participating in one activity for three years is to encourage community-building skills and to teach them discipline and perseverance. Remaining in the same club for a longer period of time also allows students to refine and polish their particular skills. Given the expectation that students will stay a member of the same club for the duration of their time in middle school, they often try out various clubs before deciding which one they would like to join.

Extracurricular activities in Japan are unique in many ways, including the times and days that they meet. It is very common for clubs to meet before and after school, as well as on Saturdays and Sundays, totaling well over ten hours a week. While some students may desire to spend even more time with their clubs, doing so would put extracurricular activities above studying, and there is no doubt many teachers and administrators would not allow this to happen.

Not only is this schedule rigorous for students, but it also demands a significant commitment from the teachers and school staff, who are required to help one of the school’s clubs in some way. In addition to the already long hours of working as a teacher, most of them spend any free time they have with the students in the club activities in order to facilitate growth outside the classroom. As there are only so many hours in the day, however, the struggles of teachers’ work environments have recently been making headlines in the news.

In a recent study conducted by Asahi Shimbun Newspaper, nearly 3,000 teachers voiced their opinions on the state of after-school activities, with about half expressing a sense of dissatisfaction. Half of the respondents also believe that the time spent in these activities ought to be improved, but it is unclear whether these teachers feel more or less time should be spent on the activities.

More specific opinions expressed in the survey spoke largely to the difficulty of finding a balance between the priority of school work and having appropriate, fulfilling time in club activities. Some teachers feel the time spent in activities takes away from students’ time to sleep the appropriate amount their growing bodies need; others feel students do not have enough time to study and do well in class and on exams. Additional teachers feel the time they spend involved with club activities takes away from their abilities to work as a teacher and experience the culture at their workplace. Even more, the outside pressures of parents requesting more practice times and better coaches also causes dissatisfaction among teachers regarding the state of extracurricular activities.

It is clear that while students feel club activities are perhaps the most enjoyable aspect of junior high school, it is hard for the majority of teachers to feel the same way. There is obvious frustration with the way club activities are managed in Japan, but Japan is assuredly not the only place with such problems. Surely a solution exists, but in the end, it will result in some changes that students and teachers may not like or agree with.
  • 朝日新聞(電子版)「中学校の部活動、教員は現状どう考えている?」, 2016/04/24. http://www.asahi.com/articles/ASJ4R4VTSJ4RUPQJ002.html
  • 読売新聞(電子版)「自然の中で学習や部活動を体験…東海大菅生」, 2016/08/16. http://www.yomiuri.co.jp/kodomo/jyuken/information/CO006070/20160815-OYT8T50176.html