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2017年10月11日水曜日

教育動向:コロンブス・デーか、先住民の日か



 アメリカの教育動向(久原みな子)

米国では、10月の第2月曜日は連邦の定める祝日「コロンブス・デー」となっている。これは、アメリカ大陸を「発見」したとされるクリストファー・コロンブスの上陸を記念して始まったものだが、ネイティブ・アメリカンの団体らを中心に、コロンブスはネイティブ・アメリカンの虐殺、奴隷制、植民地化の始まりを象徴するものとして、長くこの祝日に対する反対運動が行われてきた。銀行や郵便局などがこれまで通り休業する一方、近年、多くの州や都市、学区が「先住民の日Indigenous People's Day」とこの日の名称を変え、学校も登校日とし、ネイティブ・アメリカンの遺産と歴史をたたえ、学ぶ日として新たに認定し始めている。今年になってロス・アンジェルスなどの都市が新たに「先住民の日」の採用を決定したほか、例えばニューヨーク州シラキューズの教育員会では、今週「先住民の日」採用の可否を問う投票が行われる。また、11月は、ネイティヴ・アメリカンの文化や歴史、問題を認識しさまざまなプログラムをとおして学ぶことを推奨するNative American Heritage Monthネイティヴ・アメリカンの遺産月間となっている。

Leah Shafer and Bari Walsh. “The Columbus Day Problem.” Usable Knowledge (Harvard Graduate School of Education), 2017/10/5.





2017年9月26日火曜日

教育動向:「禁書週間」始まる

アメリカの教育動向(久原みな子)

米国図書館協会(American Library Association, ALA)が毎年9月の最終週に開催する「禁書週間(Banned Books Week)」が9月25日より始まった。この1週間は、前年に「挑発的な本」として学校や図書館の本棚からの除去や利用規制の申し立てが届けられた本を通して、読む権利と情報アクセスの自由の価値を考える期間となっている。図書館協会によれば、2016年には323件の申し立てがあり、その多くが親や図書館利用者からのものであった。2016年の申し立てが多かった本トップ10には、絵本やグラフィック・ノベルなど、子ども・ヤング・アダルト向けの本もランクインしており、LGBTに関連したトピックを主題にしたものが目立つ。図書館協会は読む権利と自由を擁護する立場であり、実際にはこうした異議申し立ての多かった本が本棚から除去されることは少なく、今も入手できる状態であることを祝福している。図書館協会が発表した最も異議申し立ての多かった本トップ10は以下の動画や図書館協会のウェブサイトで確認できる。




2017年7月8日土曜日

教育動向:州司法長官らがデヴォス教育長官を提訴




アメリカの教育動向(久原みな子)

コロンビア特別区と18州の司法長官は6日、連邦教育省とデヴォス教育長官を提訴した。オバマ政権下で決定していた、悪質あるいは違法な手法で営利目的大学に勧誘され、質の疑わしい教育や学位のために多額の学生ローンを負うことになった学生を救済するための規則(“the Borrower Defense Rule”)が7月1日付で有効になるはずであったが、これをデヴォス長官が突如延期したのは違法であると司法長官らは訴えている。悪質な勧誘と巨額の学生ローンの被害にあっている学生の多くは、2015年に倒産したコリンシアン・カレッジ(Corinthian Colleges, Inc.)のような営利目的の大学経営チェーンの学生である。オバマ政権が定めた規則は、こうした被害に合った学生が連邦政府ローンを返済できない場合、それを納税者ではなく大学に負わせることや、大学が学生に対し大学を相手取った訴訟を起こさないことを誓約させることを禁止するというものであったが、デヴォス長官はこの規則を改訂するために準備中であるとしている。






2017年6月30日金曜日

教育動向:銃と学校


アメリカの教育動向(久原みな子)
 

銃乱射事件と銃の事故が後を絶たないアメリカでは、学校で教師が生徒の命を守るために銃を携帯するべきかどうか、またそれ以外のどのような安全対策・危機管理が学校でできるかという点に関して議論が続いている。市民による銃保持の権利保護を目指す全米ライフル協会(National Rifle Association:NRA )は、子供向けに、エディー・イーグルというマスコットを起用した「銃を見つけても触らない、その場を離れる、大人を呼ぶ」を基本方針とする銃使用に関する教育プログラムを行っている。また全米各地に、市民の武器保有・携帯を認める憲法修正第2条を擁護する団体などの援助や警察との連携のもとに、現役教員に銃使用の訓練を行う研修などもある。公共の場での銃の携帯を許可している州の多くでは、大学を含む公立学校での銃の所持を原則として禁止していない場合もある。他方、教室での銃携帯は銃による事故を増やすだけであるとして、Educators Demand Actionなど、学校での銃携帯を推進する動きや政策に反対する団体も各地に存在する。また、大学や小中学校などでも、武器を持った不審者侵入に対する訓練やワークショップを定期的に行っているところもある。銃の使用をめぐる自治体や学校単位での方針の行方とともに教育プログラムや訓練の効果と弊害についても議論が深まっていくことが期待される。

  • 学校関係者向けの銃使用訓練を展開する団体FASTER(Faculty / Administrator Safety Training & Emergency Response): http://fastersaveslives.org/


2017年6月17日土曜日

教育動向:4年制大学無料化への道



アメリカの教育動向(久原みな子)

トランプ政権下で教育予算削減が焦点となっている一方、ニューヨーク州やミシガン大学では、4年制大学の授業料無料化が本格的に始動している。今年初めに全米初となる4年制州立大学の授業料無料化を発表したニューヨークは、そのためのエクセルシオール奨学金(Excelsior Scholarship)の募集を開始した。奨学金受給対象者は、州内に住む世帯年収が10万ドル以下(2019年までに12万5千ドル以下に拡大予定)で、ニューヨーク州立大学システムに参加している4年制大学と2年制大学の全プログラムに在籍する学生。およそ94万世帯が対象になると推定される。受給者は4年あるいは2年で卒業し、卒業後は受給年数分ニューヨーク州内に居住し働くことが義務付けられている。

また、ミシガン大学も、2018年より世帯年収が6万5千ドル以下の州民の学生を対象に、最大4年間の授業料を支給するプログラムを開始することを発表した。ちなみに同州内から進学する一般的な学生の年間授業料は14,826ドル、州外からの学生の授業料は47,476ドルとなっている。