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2024年11月6日水曜日

帰国報告会のご案内(11月16日)

北欧教育研究会にて、以下の通り帰国報告会を企画しました。(チラシもご覧ください)

今回は対面のみでの実施となりますが、どなたでもご参加いただけますので、 ご関心のある方はぜひお申し込みください。(事前申込制)

【日時】 2024年11月16日(土) 14:00~16:00
【場所】信州大学教育学部 N101教室
【発表】中田麗子さん(信州大学)「保護者が出会ったスウェーデンの保育園と学校」      子ども「小学生が体験したスウェーデンの学校」  
    ・教室での決まりごと(小2女児)
    ・スマートフォンと宿題について(小5男児)
    林 寛平さん(信州大学)「教育学者、空を飛ぶ」

・研究会終了後に懇親会を予定しております。参加をご希望の方は申込フォームでお知らせください。 ※会場での撮影・録音はご遠慮ください。事務局では、記録用に会場で撮影・録音する場合があります。

【申込方法】 11月9日(土)までに下記申込フォームにご記入ください。 https://forms.gle/sjFqNpmCGpdcRLsr9 皆さまのお申込みをお待ちしております。

2023年9月29日金曜日

国際セミナーのご案内

International Seminar on Shifting Boundaries of Public/Private Education


スウェーデン・ウプサラ大学からStina Hallsén准教授をお招きして、教育における公私境界の揺らぎに関するセミナーを開催します。オンライン配信もしますので、ご関心のある方はぜひご参加ください。

日時: 2023年11月9日(木) 15:00-17:00

場所: 信州大学教育学部(長野市)N101教室
  ※事前申し込みの方にはZoom配信も予定しています

内容: 
  • Stina Hallsén, "Homework Support in Sweden"
  • Reiko Nakata Hayashi & Kampei Hayashi, "Rise and Expansion of Public Juku in Japan"
  • Discussion, Q&A
 ※講演および質疑応答は英語で行われます。
  通訳はありません。

申込方法: 当日会場にいらっしゃる方は事前の申し込みは不要です。オンラインで参加をご希望の方は、Zoom IDを連絡しますので、11月8日(水)までに以下のフォームよりお申し込みください。
https://forms.gle/JmW8Z4BERjFZ41fXA


登壇者紹介:
Stina Hallsén(スティーナ・ハルセーン)(写真)
https://www.katalog.uu.se/profile/?id=N6-909
スウェーデン・ウプサラ大学教育学部准教授。教師教育、カリキュラム論、教育政策。スウェーデンでは社会経済的格差を学校に持ち込ませないためにも、宿題は学校の責任でサポートすることになっています。近年、民間企業が宿題支援員の派遣事業に参入するなどして、内側からの民営化が起こっています。宿題サポートを事例に、公私境界の揺らぎについてご講演いただきます。

中田麗子 (Reiko Hayashi Nakata)
https://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/profile/ja.ghSVumyC.html
信州大学大学院教育学研究科研究員、ウプサラ大学客員研究員、オスロ・メトロポリタン大学客員研究員。教師教育、保育学、比較教育学。公営塾研究プロジェクトでは、2022年に全国の自治体を対象としたアンケート調査を実施しました。過疎化に危機感を抱く自治体などが、地域の魅力化のために地元の小中高校生のために公営塾を設置する場合があり、近年特に広がりを見せています。初めて行った全国調査の二次分析をもとに、公営塾設置自治体の特徴などについて発表します。

林寛平 (Kampei Hayashi)
https://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/profile/ja.ZeTeOpkh.html
信州大学大学院教育学研究科准教授、ウプサラ大学客員研究員。比較教育学、教育政策学、教育行政学。スウェーデンを中心とする北欧の教育を研究するとともに、最近は『教育の輸出』政策に着目してグローバル教育政策市場の拡大について研究しています。そうした国際的な視点から見た日本の公営塾の特徴について発表します。

※この国際セミナーは、JSPS科研費JP21K18501「公営塾の全国調査にもとづく効果と課題の分析」(研究代表者:林寛平)の成果発表として実施します。科研課題の進捗については公営塾科研プロジェクトのウェブサイトをご覧ください(https://publicjuku.com/)。

※信州大学教育学部とウプサラ大学教育学部は学術交流協定を締結しています。両校はこの協定をもとに、学生・院生の相互派遣、教職員・研究者の交流、大学院教育における協力、学術情報交換、共同研究、会合やシンポジウムの開催などの取り組みを実施し、教育・研究の一層の充実につなげることを目指します。本セミナーには、国際共修科目「Education in Global Perspectives II/III」を受講する学生も参加します。

2020年12月27日日曜日

関連学会等イベント(2021)

1. 国内学会等 

日本教育学会 第80回大会

 開催期間 2021年8月25日(水)~27日(金)

 会場 オンライン(筑波大学)

 発表申込 2021年4月1日(木)~5月7日(金)

 参加申込 2021年6月上旬より

日本比較教育学会 第57回大会

 開催期間 2021年6月25日(金)~27日(日)

 会場 オンライン(筑波大学)

 発表申込 2021年3月1日(月)~4月7日(水)18:00まで

 参加申込 2021年3月1日(月)~6月27日(日)12:00まで

日本教育社会学会 第73回大会

 開催期間 2021年9月11日(土)~12日(日)

 会場 オンライン (関西学院大学)

 発表申込 2021年6月14日(月) 10:00~7月14日(水) 18:00

 参加申込 2021年6月14日(月) 10:00~8月27日(金) 17:00

日本教育行政学会 第56回大会

 開催期間 2021年10月8日(金)~10日(日)

 会場 オンライン (福岡大学)

 発表申込 2021年7月30日(金)17:00まで

 参加申込 会員のみ


2. 国際学会等

WERA 2020+1 (World Education Research Association Focal Meeting)

 開催期間 (大会)2021年7月7日~9日 (ワークショップ)2021年7月6日

 会場 オンライン(Universidad de Santiago de Compostela, Spain)

 発表申込 2020年12月12日

 参加申込 2021年4月1日~2021年6月20日

 今後の予定 WERA2022 Focal Meeting, San Diego (2022年4月22日-25日、発表申込 2021年8月26日)

ECER 2021 (European Conference on Educational Research)

 開催期間 2021年9月6日

 会場 オンライン (Geneve, Switzerland)

 発表申込 2020年12月1日~2021年1月31日

 参加申込 2021年4月1日~

 今後の予定 ECER2022 Yerevan State University in Armenia(2022年8月22日-26日)

NERA 2021 (Nordic Educational Research Association's Annual Congress)

 開催期間 2021年11月3日~5日

 会場 Odense (Denmark)

 発表申込 2021年2月15日~2021年4月15日

 参加申込 2021年5月13日~2021年6月10日

 今後の予定 NERA2022 アイスランド(2022年6月か8月)

AERA 2021 (American Educational Research Association's Annual Meeting)

 開催期間 2021年4月8日~12日

 会場 オンライン

 発表申込 ~2020年8月14日

 参加申込 2021年5月13日~2021年6月10日

   今後の予定 AERA2022 サンディエゴ(2022年4月22日~25日)、AERA2023 シカゴ(2023年4月13日~4月16日)、AERA2025 オーランド

9th IEA International Research Conference (IRC)

 開催期間 2021年11月14日~15日

 会場  Mohammed Bin Rashid University of Medicine and Health Sciences, Dubai Healthcare City, Dubai, (UAE)

 発表申込 2020年9月1日~2021年4月11日

 参加申込 2021年6月15日~2021年10月19日

CESA 2020 (Comparative Education Society of Asia, 12TH BIENNIAL CONFERENCE KATHMANDU 2020)

 開催期間 (大会)2021年9月25日~26日 (プレ大会)9月23日~24日

 会場  オンライン (Kathmandu, Nepal)

 発表申込 2021年1月1日~3月31日

 参加申込 2021年6月30日~

WCCES XVIII World Congress (XVIII World Congress of Comparative Education Society)

 開催期間 2022年7月18日~22日

 会場  Bangalore (India)

 発表申込 未定

 参加申込 未定


2020年3月16日月曜日

授業: 世界の授業スタイル

1. 教科書


2. 講義映像


13章 世界の授業スタイル (60分22秒)


3. 講義資料


4. 参考文献


はじめに
第1節 世界の授業スタイル
 1. Nintendo Wiiで体育の授業(シンガポール)
2. 寝っ転がって授業を受ける(北欧)
3. アンドロイド端末で学ぶ(アフリカ)
 4. 起業コンテストと移民(欧州)
第2節 世界から見た日本の授業
 1. 偏見の逆輸入
 2. 日本の授業
 3. 日本の授業研究
第3節 グローバル化する世界の授業
 1. 輸出財としての授業

2. イデオロギーの移植
おわりに

5. アンケート



2019年7月7日日曜日

世界教育学会(WERA)のご案内

2019年世界教育学会東京大会(World Education Research Association 2019 Focal Meeting in Tokyo)で林寛平が研究発表をします。
ご関心のある方はぜひお越しください。

【日時】 2019年8月5日(月)~8日(木)

【場所】学習院大学 中央教育研究棟 404教室

【発表日時】2019年8月7日(水) 14:25~18:00

【発表題目】Shifting Boundaries of Education and the Rise of Private Supplementary Tutoring—International and Comparative Perspectives

【発表内容】
Nowadays, the knowledge monopoly of mainstream education is being questioned in many contexts and different ways. National education systems continue to be framed by state policy. However, today, compared to previous years, enterprises, schools, and families are more active in an enlarged educational landscape, which is driven by different interests, ranging from public and private to philanthropic.

An example of the common activities that take place in the changed educational landscape is supplementary tutoring, which is often referred to as shadow education; aiming at strengthening the knowledge and competitiveness of each student. Another example is the outsourcing of teaching by public schools to private actors. These examples indicate that the interaction is blurring and the boundaries of regular schooling are shifting.

The purpose of this symposium is to contribute with knowledge on the processes and consequences on the reframing of state educational systems. We examine the interplay in terms of policy and practice between the state, market, and civil society and the participation and integration of new actors.

In this symposium, contributions are theoretically framed by institutionalism and boundary work, including policy enactment and narratives, focusing the legitimacy of different educational providers and curricula. To capture current trends, we examine and compare strong characteristic cases. In this manner, we endeavour to delineate the shifting dynamics of regular education in this era of extensive educational change.

Keywords: Supplementary Tutoring, Shadow Education, Institutionalism, Legitimization, Boundary Work

Chairs: Stina Hallsén, Uppsala Universitet & Kampei Hayashi, Shinshu University

Part 1
1. State Responses to the Rise of Private Supplementary Tutoring: A Comparative Analysis of Regulations and their Implications
    Mark Bray, East China Normal University, Shanghai

2. Market Responses to State Regulations on Shadow Education: Chinese Experiences and Implications for Public-Private Partnerships
    Zhang Wei, East China Normal University, Shanghai

3. Policy Enactment at the Boundary of Public Education in Sweden; the rise of Private Supplementary Education and a changed Political Discourse
    Stina Hallsén, Uppsala universitet

4. Public Role of Private Education Services in Japan
    Megumi Honjo, Kanazawa University & Reiko Hayashi Nakata, Uppsala University


Part 2
5. Seeking Private Supplementary Tutoring as a Strategy of Parentocracy: Understanding the Demand for Private Tutoring of Chinese Parents
    LIU Junyan, East China Normal University

6. The Many Faces of Shadow Education – a Nordic Case
    Eva Forsberg, Stina Hallsén, Marie Karlsson, Helen Melander Bowden, Tatiana Mikhaylova & Johanna Svahn, Uppsala University

7. Exporting Public Education: ‘Domestic Public’ Becomes ‘Overseas Private’
    Kampei Hayashi, Shinshu University

8. The formation of policy on private supplementary tutoring in post-Soviet Russia
    Tatiana Mikhaylova, University of Gävle and Uppsala University

詳細はWERA-TOKYOウェブサイトをご覧ください。

2019年7月6日土曜日

北欧教育研究会のご案内

北欧教育研究会の8月例会で林寛平が最近の研究内容を報告します。
ご関心のある方はぜひお申し込みください。

北欧教育研究会は、北欧5カ国(アイスランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド)の教育に関心を持つ人たちの集まりです。北欧教育に関心を持つ人たちの交流の場として、北欧の教育に関する情報交換を行っています。

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研究会のご案内(2019年8月)

2019年8月の例会を下記の通り企画しましたので、ぜひご参加ください。
なお、会場準備の都合により、参加を希望される方は事前にお申し込みをお願いします。

【日時】 2019年8月13日(火) 13:00~15:00

【場所】 旧吉田茂邸「金の間」(神奈川県大磯町)
    http://www.town.oiso.kanagawa.jp/oisomuseum/index.html

【アクセス】JR東海道線「大磯駅」下車、バス「二宮駅行」「湘南大磯住宅行」で
      城山公園前下車

【報告】林寛平さん(信州大学)
    題目:グローバル教育政策市場による「教育の植民地化」を考える

【申込方法】 8月9日(金)までに下記申し込みフォームにご記入ください。
      https://forms.gle/yH7mg7aFqkb1ctUJ9

※オンラインによる参加も歓迎します。オンライン参加の場合、SkypeのIDを上記の申し込みフォームにてお知らせください。オンライン参加が多い場合には、SkypeからGoogle Hangoutに変更する場合があります。
※会場からは、大磯ロングビーチ・大磯プリンスホテルや湘南海岸に徒歩で行けます。ぜひゆっくりしていってください。

研究会後に懇親会を予定しています。
参加を希望される方は、上記の申し込みフォームにてお申し込みください。
(懇親会のみの参加も歓迎します・お子様連れの参加も歓迎します)

みなさまのお申し込みをお待ちしております。
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研究会のウェブサイトはこちら(http://nordiskutbildning.blogspot.com/2019/07/20198.html)

2019年3月7日木曜日

サバティカル成果報告会の開催について

2018年3月から1年間、信州大学教育学部からサバティカル(研究休暇)をいただいて、スウェーデン・ウプサラ大学を拠点に研究を進めました。この間の研究の成果と進捗を共有するために、報告会を開催します。どなたでもご自由にご参加ください。

キーワード: グローバル教育政策市場、教育の輸出、Edu-Port Japan (日本型教育の海外展開)、国際学力調査、リベリア、ガーナ、ベトナム、Qatar-Finland International School

日時: 2019年3月20日(水) 14:40~16:10
場所: 信州大学教育学部 N304教室

報告者: 林 寛平 (信州大学教育学部・准教授、ウプサラ大学教育学部・客員研究員)

日程:

14:40-15:30 報告
  1. これまでの研究とサバティカル期間の研究計画
  2. サバティカルによる成果と進捗
  3. 今後の研究計画

15:30-16:10 質疑応答

申込: どなたでもご自由にご参加ください。

Facebookイベントページ: https://www.facebook.com/events/2039897126087684

※科学研究費補助金「グローバル教育政策市場のインパクトに関する国際比較研究」(若手研究(A) 16H05960)、「国際アセスメントの開発過程における政治的メカニズムの分析」(挑戦的萌芽研究 16K13521)の報告を兼ねています。

2017年12月8日金曜日

研究紹介: やりたいこと”がない人はなぜ肩身の狭い思いをするのか(卒業研究)

研究紹介

森下結衣『就職活動における志望動機の社会的機能
―企業と学生の”やりたいこと”理解に着目して―』(卒業論文)


林 寛平(信州大学)

 長い就職氷河期を経て、近年は大卒の就職率も改善してきた。しかし、就職活動の早期化・長期化に伴う学業への悪影響や新卒社員の高い離職率が問題となり、企業と学生との間のミスマッチが顕在化している。新卒社員の離職に関しては、世代論による若者批判が根強くある一方で、「やる気搾取」(阿部2006)のような企業倫理や社会制度に対する批判も見られる。また、企業側は「産業構造や社会の変化に主体的に対応し、生涯現役で活躍できる人材の育成」(経済団体連合会2016)を求めているのに対して、経済協力開発機構(OECD)の成人力調査(PIAAC)では、日本の成人はオーバースペックで、高い能力を生かせるような仕事が不足している可能性があり、産業構造の転換が課題として指摘されている(松下2013)。
 「人物重視」と言われ、企業はエントリーシートや面接で学生に「やりたいこと」(志望動機等を含む)を尋ね、学生の個性や特徴を把握しようと試みる。一方で、学生たちは似通ったリクルートスーツを身にまとい、髪型を就職活動用に整え、一様な受け答えを練習する。公益財団法人日本生産性本部の調査によると、「じぶんには仕事を通じてかなえたい「夢」がある」かとの問いに対して、肯定的に回答した新入社員の割合は2009年の72.9%をピークに、2015年には58.9%にまで急減している(生産性労働情報センター2015)。本研究はこのような企業と学生の思惑の違いに着目し、「やりたいこと」を問うことが社会的にどのような機能を果たしているのか明らかにするために、関連資料の分析と採用者および被採用者へのインタビュー調査を行った。

45%以上の企業が「やりたいこと」を尋ねている

 まず、就職活動中に企業が学生の「やりたいこと」をどの程度知りたがっているのかを調べるために、東京証券取引所に上場している代表的な企業(日程225)のうち、108社のエントリーシートを入手した。このうち49社(約45%)の企業が「志望動機」を記入する欄を設けていた。例えば、「生保業界を選んだ理由と、その中で当社を選んだ理由を記載してください」(第一生命保険株式会社)「実現の場としてHondaを志望する理由を記入してください」(本田技研工業)「あなたがキッコーマンに入社して、「やりたい仕事」を具体的に教えてください」(キッコーマン)といったような設問が見られた。ここでは、「やりたいこと」の内容が評価されるのか、あるいは「やりたいこと」があることをうまくアピールできることが評価されるのかは明確ではない。そこで、企業の人事担当者3人と就職活動を経験した社会人3人にインタビューを行った。

企業の人事担当者へのインタビューから

 エントリーシートの分析から、第二次産業に属する企業は志望動機を尋ねる割合が特に多かったことから、第二次産業2社の人事担当者にインタビューを行った。「今の就活のシステム的にも、聞いても意味がないと思っているのでどうでもいい。『志望動機』の記述において優劣などはない。また、大して求めていないのに、『志望動機』を書くという負荷が大きすぎるということが問題だと思う」という率直な意見もあった。一方で、企業が「志望動機」を尋ねる動機としては、以下の2点挙げられた。第一に、会社を知ったきっかけや応募に至った理由を知りたいという動機、第二に、入社する意思の確認である。これらは、オンラインでエントリーできるようになり、学生は多数の企業の中から応募先を選び、企業は膨大の応募の中から意志ある応募者を選ぶという仕組みによって生じているコストだといえよう。

就職活動経験者へのインタビューから

 10社に応募し、そのうち1社から内定を得たXさんは、「やりたいことがなかったとしても、会社のホームページを見て一番やりたいことを書いた」と述べ、企業が「志望動機」を問う動機を「お約束事だと思う」と形式的なやり取りだと考えていた。「集団面接でも皆言葉は異なっても、大学で培ったものを生かして御社に貢献したいといっているだけだった。また、企業も『志望動機』問い詰めてくることはなかった。『志望動機』は型を作って企業のホームページを見てカメレオンのように色を変えれば作成できるものでしかなかった」と述べている。
 一方、5社に応募し、そのうち3社から内定を得たYさんは、「『わたしはこんな人間です』ということが伝わるように書いた。決まりきった定型文は書かないで、素直に正直に書いた」と述べている。
 また、40社に応募し、そのうち2社から内定を得たZさんは、「やりたいことなんてみんなないだろうけど、どれだけ会社の意向や方針に沿ってやりたいことを言えるのかというところを見ていると思う」と述べている。

 以上の文献調査とインタビューから、森下は以下3つの考察を行った。

考察1 社会で求める”やりたいこと”と個人の”やりたいこと”は違う

 社会では”やりたいこと”を問われる機会が多くあり、たびたび”やりたいこと”の表出が求められる。しかし、就職活動の場面では、暗黙のうちにやるべきことと”やりたいこと”の整合が求められる。企業の期待と就活生の希望の間にはギャップがあり、その調整が一方的に就活生に押し付けられている。

考察2 “やりたいこと”を表明する場面には権力関係がある

社会(企業)と個人(就活生)の間の”やりたいこと”の不一致を柔軟に調整できるという素質は、規律権力に従順であることの現れでもある。重田(2016)が指摘するように、規律権力は「人間が潜在的に持つ力を最大限に引き出そうとするのだが、それと同時に従順さと制御しやすさを高めるという特徴を持」ち、そのような特徴を持った人間は「身体の細部に至るまで生産性を高める訓練を受け、その意味では高い能力を身に着ける。だがそれと同時に、命令への服従、秩序への半ば無思考の従属を受け入れている」。
 子どもが大人に対して「将来の夢」や”やりたいこと”尋ねたら、違和感を覚えるだろう。これは単に大人がすでに自己実現をしていたり、余命が短いために選択可能性が乏かったりということに起因するだけではなく、”やりたいこと”を表面する場面には権力関係が生じているということを示している。企業が学生に、社会が人々に、規律権力に適応できるかどうかを見分ける術として、”やりたいこと”を問うているのではないか。

考察3 相互承認のための”やりたいこと”

学生Yはインタビューの中で、代替のきかない自分らしさを述べることで、自分はこの会社に適していることを示し、それに対して会社に「そんなあなたが欲しい」と言わせることで学生はそこから安心感を得ていると答えている。一方で企業もやりたいことを問い、「御社でどうしても働きたい」という気持ちを受け取ることで安心感を得ている。このような相互承認の関係を作ることで、お互いに価値を与え、マッチングが合理的に行われているという虚構を補強しているのではないか。

“やりたいこと”がない人はなぜ肩身の狭い思いをするのか

 森下は「総合考察」として、”やりたいこと”のない人はなぜ肩身の狭い思いをするのか、という問いに自分なりの回答を用意している。
 “やりたいこと”の有無が議論として成り立つには、”やりたいこと”のある人とない人の存在が必要になる。全員が当然に”やりたいこと”を持っているとしたら、そもそも”やりたいこと”を持つことに価値が置かれない。また、”やりたいこと”のある人であふれている社会を理想として据えても、原理的に成立し得ない。現実には、”やりたいこと”のある人ない人もどちらもいるからこそ、社会はまわっているのである。
 インタビュー調査の結果からも明らかになったように、”やりたいこと”のないという人は存在し、そのような人々は自身を否定的に捉えている。社会に、親に、先生に「自分のやりたいことをやりなさい」と言われるが、就活場面で”やりたいこと”を器用に表出できる人は、経済的な価値があると考えられている。
 しかし、就活生がかりそめの”やりたいこと”を表明し、企業もその意図を了解しながら受容しているとすると、”やりたいこと”がない人が肩身の狭い思いをしているのは”やりたいことがない”ためではなく、企業が期待するような”やりたいこと”を供出できないために、社会との間での相互承認関係が結べず、そのことによって不安が残ってしまうためではないか、と考察した。

  • 阿部真大(2006)『搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た!』集英社
  • 松下佳代(2013) NHKニュース「大人の学力の調査で日本首位」(2013年10月8日)
  • 一般財団法人日本経済団体連合会(2016)『今後の教育改革に関する基本的考え方―第3期教育振興基本計画の策定に向けて―』
  • 生産性労働情報センター(編)(2015)『平成27年度新入社員「働くことの意識」調査』
  • 重田園江(2011)『ミシェル・フーコー―近代を裏から読む』ちくま新書
  • 村上龍、はまのゆか(2003)『13歳のハローワーク』幻冬舎
  • 久木元真吾(2003)「『やりたいこと』という論理:フリーターの語りとその意図せざる帰結」社会学研究会(編)『ソシオロジ48』潮人社
  • 鵜飼洋一郎(2007)「企業が煽る『やりたいこと』-就職活動における自己分析の検討から」大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室(編)『年報人間科学28』
  • 太郎丸博、吉田宗(2007)「若者の求職期間と意識の関係-『やりたいこと』は内定率に影響するか」 数理社会学会(編)『理論と方法22』
  • 妹尾麻美(2013)「新規大卒就職活動において「やりたいこと」は内定取得に必要か?」社会学研究会(編)『ソシオロジ59』潮人社
  • 溝上慎一(2004)『現代大学生論 ユニバーシティ・ブルーの風に揺れる』NHKブックス
  • 文部科学省(2011)『小学校キャリア教育の手引き』
  • ジグムント・バウマン(著),酒井邦秀(訳)(2014)『リキッド・モダニティを読みとく 液状化した現代社会からの44通の手紙』ちくま学芸文庫


2017年9月29日金曜日

国際シンポジウム「国際アセスメント時代における教育行政」のお知らせ

日本教育行政学会と韓国教育行政学会が隔年で主催する国際シンポジウムが以下の通り開催されます。シンポジウムは公開で行われますので、学会員でなくても申込不要・無料でご参加いただけます。ご関心のある方はぜひご参加ください。

※資料の残部があります。ご希望の方は実費にて郵送しますので、メールで送付先をお知らせください。(配布終了)

国際シンポジウム「国際アセスメント時代における教育行政」

日時: 2017年10月14日(土) 13:00~16:45

場所: 日本女子大学 目白キャンパス 香雪館401教室

趣旨: 近年、国際アセスメント、特にPISAが多くの国・地域の教育政策、教育改革に少なからぬ影響を与えている。「学力」の国際比較における優位性を獲得あるいは確保するために、教育内容のスタンダード化やテストとアカウンタビリティ政策を重視するようになった国・地域が多いが、対応の仕方は一様ではない。また、ある国や地域で功を奏したとされる改革や政策が外国に「輸出」されるという現象も現れている。本シンポジウムでは、このように児童・生徒の「学力」のみならず、各国及び地域の教育政策の効果も比較対象となる「国際アセスメント時代」の教育行政の課題をテーマに検討を行う。

報告者: 金 龍      清州教育大学 (韓国)
             Bob Lingard    The University of Queensland (オーストラリア)
             Eva Forsberg    Uppsala University (スウェーデン)(登壇なし)
             Daniel Pettersson    University of Gävle (スウェーデン)
             澤野 由紀子    聖心女子大学
司会:    小島 優生   獨協大学
ファシリテーター: 林 寛平    信州大学

シンポジウムの詳細・発表資料等については以下のリンクをご覧ください。
http://www.jeas.jp/act/conf/

また、翌日(10月15)には、一部報告者を招いて小規模な研究会を開催します。併せてご参加ください。(こちらは、10月6日までにお申込が必要です)
http://nordiskutbildning.blogspot.jp/2017/09/201710.html

【報告者略歴】
Bob Lingard: クイーンズランド大学教授、社会学的視点から教育政策を研究し、Global Education Policyやテスト政策について、多くの論文・著作を発表。主な近著に、Globalizing Educational Accountabilities (Routledge, 2016), The International Handbook of Global Education Policy (Wiley, 2016), National Testing in Schools: An Australian Assessment (Routledge, 2016)など

Eva Forsberg: ウプサラ大学教授、数々の研究プロジェクトのリーダーを歴任する中で、教育ガバナンスやアセスメント文化の研究を進めている。主な近著に、Mølstad, C., Pettersson, D. & Forsberg, E. (forthcoming) A Game of Thrones: Organising and Legitimising Knowledge through PISA Research. European Educational Research Journal.

Daniel Pettersson: イェヴレ大学准教授、Dr. Eva Forsbergとともに、現代における国際アセスメント指標の活用実態と歴史についての研究を進める。主な近著にLindblad, S., Pettersson, D. & Popkewitz, T.S. (forthcoming) Numbers, Education and the Making of Society: International Assessments and Its Expertise. Routledge: London & New York.

金 龍: 清州教育大学教授、教育改革や規制緩和改革について、批判的検討を行い、研究を進めている。主な近著に、Tracing the discourse of autonomy around the education reform of the 1990s in Korea: A critical discourse analysis (Journal of Educational Administration and Policy, v.1.n.1. 2016. pp.41-52)

澤野 由紀子: 聖心女子大学教授、主な研究課題は、ヨーロッパの生涯学習政策とその効果、能動的市民性を育む教育内容・方法の国際比較研究、北欧諸国の子ども行政システム、ロシア・CIS諸国の教育改革。主な著書に、『揺れる世界の学力マップ』(明石書店、2009年、共編著)、『教育改革の国際比較研究』(ミネルヴァ、2007年)等。

※本研究はJSPS科研費 JP16K13521, JP16H05960の助成を受けたものです。