アメリカの教育動向(久原みな子)
1. 新しく成立した、すべての生徒が成功する法(ESSA)
落ちこぼれを作らないための初等中等教育法(NCLB法)に代わって昨年末成立した新教育法により、教育に関する権限を連邦政府から各州へと戻すことになっている(前回のブログ記事参照)が、実際にどのように教育行政を州が行っていくかはまだ決定していない。生徒が受けるテストの数は減ってもテスト結果が学校評価に使われることには変わりないだろう。2. 全米共通学力基準コモン・コアから州独自の基準へ
コモン・コアに代わる州独自の基準を設定する州が増えるはずだが、多くは、名前を変更する程度で内容的にはそれほど変わらないものになると考えられる。3. チャータースクールの行方
今年でチャータースクール開始から25年になり、およそ6700校に300万人が学ぶまでになった。連邦政府も莫大な財政援助をしており、多くのアメリカ人も支持しているが、いまだ不正や汚職もあとをたたない。チャータースクールは、大統領選でも議論の的となる数少ない教育問題のひとつとなるだろう。
4. 不法移民の子どもたちの教育
米国に不法に移民した子どもたちの高等教育進学をめぐる問題は、移民問題の解決の遅れにより行き詰まっている。大統領選における不法移民をめぐる議論もこの問題を左右することになると考えられる。5. 大学入試におけるアファーマティヴ・アクションの終焉
合衆国最高裁が大学入試選考で人種を考慮することを禁止し、アファーマティヴ・アクションが終わりになると考えられる。これに対して、少数派の学生による反対運動が予想される。大学側は、キャンパス内の多様性維持のためにどのような方法で様々な学生を集めていくか再考することが求められるだろう。6. 大学学費・学生ローンの見直し
多くの大統領選候補者たちが、高等教育を無償あるいは借金の必要のないものにすることを求めており、高等教育機関は、授業料の設定に関して根本的な議論を進めていく必要があるだろう。
- Claudio Sanchez. “Six Education Stories to Watch in 2015.” NPR News, 2015/1/3.
- Claudio Sanchez. “6 Education Stories To Watch In 2016.” NPR News, 2016/1/1.
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