2020年9月15日火曜日

オンライン学習の出席・成績評価モデル

 不登校の小中学生が自宅でオンライン学習をした時に、学校は出席や成績をどのように判断すればいいか。文科省は「実態に応じて校長が判断すべし」と通知していますが、判断基準がないため難しい現状があります。そこで、オンライン留学プロジェクトOJaCでは、主に以下の問いに答えるために、全国17自治体と共同で実証実験を行っています。「ガイドライン評価委員会」(座長・林寛平)では、年度末に評価基準のモデルを一般公開することを目指して取り組んでいます。

【出席基準】学校の敷地内に一歩でも入れば、給食を食べるだけでもその日は出席扱いにできます。しかし、在宅学習では自宅にいるだけでは出席にはなりません。何らかの学習活動が必要になりますが、何をどれくらいやれば、何日分の出席になるでしょうか。

【成績基準】教室では決まった進度で一斉に授業が展開し、単元の内容が理解できていない児童生徒がいた場合でも何らかの評価が与えらることが多くあります。オンライン学習の場合、上の学年の「先取り」やつまずいた既習内容の「やり直し」が個別にできます。不登校の子どもが教室で扱っている単元と異なる題材に取り組んだら、それは評価できるでしょうか。また、6年生の児童が、これまで手付かずだった4年生の学習に熱心に取り組み、年度末には5年生の内容まで進んだ場合には、その成果をどのような形で評価・フィードバックできるでしょうか。

 不登校児童生徒の事情や背景は多様で、能力や学習進度も異なっています。週に数回登校できる子もいれば、全欠となる子もいて、中には特別な支援が必要な子もいます。支援に熱心なご家庭もあれば、学校に不信感を抱いている保護者もいて、子育てに意欲が持ちにくい複雑な環境がある場合もあります。

 この活動は厳格な基準を設けて通常の学校と同じように出席扱いや学習評価をすることを目指すのではありません。不登校児童生徒の学習をさまざまな角度からできる限り肯定的に承認し、児童生徒の自己肯定感を高め、学びへの意欲を喚起し、継続する動機付けに役立ててもらうことを目指しています。文科省がこれまで通知してきた方針の通り、各自治体や学校には、不登校児童生徒との多様なかかわりの中から得られた情報を可能な限り加味したうえで、出席の判断や学習評価をしていただくことを前提としています。

 このモデルでは汎用性の高い出席・学習評価の基準を示すことを目指していますが、これは不登校児童生徒の多様性を無視して、同じような手立てで対応することを求めているわけではありません。このモデルを各自治体や学校がそれぞれの実態に応じて改変して活用することで、多様な学びの機会が提供できるようになることを期待しています。そうすることで、不登校児童生徒が未来を自ら切り開く希望とチャンスを提供したいと願っています。

2020年9月10日木曜日

バーチャル教育実習を始めました

 信州大学教育学部では「バーチャル教育実習」を始めました。

 教育実習は4年間の教員養成課程の中でも、最も実地的な体験を積む重要な学びの機会です。教育学部を卒業して教員になって以降も、多くの人が実習で関わった学級や子供たちのことを覚えているものです。実習中に、想定したとおりに授業が進まなかったり、子供から思わぬ反応が返ってきたり、忙しい現場で少しでも良い教育を提供しようと奮闘する先生方の熱意に触れたりすることを通じて、教職への適性を考える絶好の機会でもあります。

 新型コロナウィルスの影響で実地での実習が制限される中、完璧な代替措置とはなり得ませんが、少しでも学生たちの学びの糧にしてほしいという思いで「バーチャル教育実習」のコンテンツを作成しました。これは教育実習の学部補充プログラムの一部として実施しています(教育実習のすべてを「バーチャル教育実習」で代替しているわけではありません)。

 教育実習では、初日から授業を担当することはまれで、多くの場合、最初の1週間は「観察実習」を行うことになります。この期間は、まずはある一人の子供に着目し、登校から下校までの学校生活の様子をつぶさに観察します。観察に慣れてきたら、子供同士のかかわりや子供と教師との関係、教材や学校空間の役割などに視野を広げて観察します。さらに、自分が教壇に立った時に、それぞれの子供たちにどのような教育的な手立てができるかを考えながら観察します。このような「観察実習」の代替として、授業の様子を録画した素材を作りました。

・教育新聞「【コロナ禍での教育実習】(下)大学や教育委員会の模索」(2020/10/29)

 「バーチャル教育実習」では、2020年7月に教育学部の教職員からなる撮影部隊が附属長野小学校・長野中学校にお邪魔し、7時間分の授業を9台のカメラと2台のICレコーダーを用いて撮影・録音しました。この中には、360度カメラ(全天球カメラ)や本人視点カメラ(アクションカム)なども含まれます。

 撮影・録音したこれらの素材を、教職大学院の院生を中心とする編集部隊が編集(映像と音声を合わせ、トリミングし、6本のタイミングを合わせる等)を行いました。完成したデータはYoutube Liveのマルチカメラ配信機能を使って録画しました。

 360度カメラを用いることで、学生はそれぞれの視点で授業を観察できます。また、今回は児童と教師に本人視点カメラを装着してもらいましたので、まずは子供の立場から見た後で、同じ場面を大人の立場から見直すこともできます。興味の対象が目まぐるしく変わる「子供時間」を追体験し、その子供が次第に一つの教材に没頭していく様子が観察できます。また、熟達した教師が授業中に何に注目し、どのような関りをしているのかを観察することで、子供と教材を結び付けるための工夫を学ぶことができます。さらに、録画映像を繰り返し見ることで、授業の流れをつかんだうえで子どもたちの関りを細かく観察することもできます。こういった点で、実地ではできない体験が可能になりました。

 デモ映像は以下の通りです。一般公開用に関係者の許可を得ています。

 ※マルチカメラ機能を使うにはPCでご覧ください。



360度カメラは画面上でマウスをドラッグすることで上下左右が見られます。


マルチカメラは右下のカメラマークのアイコン()を押すと6台のカメラが選択できます。



【授業提供】信州大学教育学部附属長野小学校信州大学教育学部附属長野中学校
【撮影部隊】林寛平森下孟佐藤和紀・岨手智子・宮島新鎌倉大和
【編集部隊】新村涼一・栗田瑞樹・林寛平

2020年5月1日金曜日

Zoom自動で文字起こし(字幕)

Zoomで話した内容を自動で文字起こしし、字幕のようにして配信する方法を紹介します。
難聴者などが遠隔授業を受けやすくしたくて考えましたが、記録も残って便利です。

ポイント1 パソコンが2台あれば、あとはすべて無料でできます。
ポイント2 画面共有しても途切れません。

課題1 ホストが話した時しか文字起こしされません。複数で議論する場合には、Google Docsをメンバーと共有するといいでしょう。

※試行錯誤中のため、もっといい方法があったら教えてください。


1. 用意するもの

以下は、Windows PCを想定しています。

1-1. ハード
 A. 配信用パソコン
 B. 文字起こし用パソコン
 C. マイクやウェブカムなど(必要に応じて)

1-2. ソフト
 D. Zoomアカウント 配信用
 E. Zoomアカウント 文字起こし用
 F. Open Broadcaster Software (OBS)
 E. Googleアカウント (Google Docs)

2. 準備


【Google Docsの設定ー自動文字起こし】
2-1. 文字起こし用パソコン(B)でChromeを立ち上げ、Google Docsで新規ドキュメントを開きます。

2-2. 上のメニューバーから、「ツール」(Tools)をクリックし、「音声入力」(Voice Typing)を選択します。(Ctrl+Shift+Sでもいけます)



2-3. 文書の左に音声入力のマイクのアイコンが表示されますので、その上にある言語設定を「日本語」にします。

2-4. マイクのアイコンを押して(赤くなる)、文字起こし用パソコン(B)に話しかければ、自動で文字起こしが始まります。(驚き精度です)

【OBSの設定ー文字起こし画面をリアルタイムで取り込む】
2-5. 文字起こし用パソコン(B)OBS(F)をインストールします。

2-6. 文字起こし用パソコン(B)OBS-VirtualCam(G)をインストールします。こちらのOBS-VirtualCam2.0.4-Installer.exeをクリックすればOK。

2-7. OBS(F)を起動し、下の「ソース」にある「+」をクリックして「ウィンドウキャプチャ」を選択します。



2-8. 「ソースを作成/選択」のダイアログが表示されますので、「OK」を押します。

2-9. 「ウィンドウ」から、先ほどのGoogle Docsのページが表示されているChromeをソースとして選択し、「OK」を押します。


2-10. OBS(F)の画面にGoogle DocsのChromeが表示されます。赤線で囲われている部分を広げたり、縮めたり、動かしたりできるので、希望の画面レイアウトに調整します。この際、Google Docsの下の方を切り取っておくと、画面が自動でスクロール・ダウンされて便利です。

2-11. OBS(F)の上のメニューバーから「ツール」(T)を選択し、VirtualCamを押します。


2-12. Buffered Framesを「0」にして、「Start」を押します。

【Zoomの設定ー文字起こし画面を配信】
2-13. 配信用パソコン(A)でZoomを起動し、配信用アカウント(D)から会議を開始します。

2-14. 文字起こし用パソコン(B)でZoomを起動し、文字起こし用アカウント(E)から会議室に入室します。この際、文字起こし用アカウント(E)のマイクはミュートにします。

2-15. Zoomの文字起こし用アカウント(E)の下にある「ビデオを開始」の右から「カメラを選択」で「OBS-Camera」を選択します。


3. 配信


3-1. 配信者が話すときに、文字起こし用パソコン(B)に表示されているGoogle Docsの音声入力(マイクのアイコン)をクリックします。

3-2. 文字起こしに使ったGoogle Docsはそのまま保存されるので、記録としても使えます。

2020年3月16日月曜日

授業: 世界の授業スタイル

1. 教科書


2. 講義映像


13章 世界の授業スタイル (60分22秒)


3. 講義資料


4. 参考文献


はじめに
第1節 世界の授業スタイル
 1. Nintendo Wiiで体育の授業(シンガポール)
2. 寝っ転がって授業を受ける(北欧)
3. アンドロイド端末で学ぶ(アフリカ)
 4. 起業コンテストと移民(欧州)
第2節 世界から見た日本の授業
 1. 偏見の逆輸入
 2. 日本の授業
 3. 日本の授業研究
第3節 グローバル化する世界の授業
 1. 輸出財としての授業

2. イデオロギーの移植
おわりに

5. アンケート



2019年12月2日月曜日

研修報告: 海外学校臨床実習2019 報告会のご案内

2019年11月16日(土)から12月1日(日)にかけて実施した「海外学校臨床実習2019」(ストックホルム&レッジョエミリア)の報告会を以下のとおり開催します。ご関心のある方はご参加ください。


日時: 2019年12月13日(金) 10:30~12:10
場所: 信州大学教育学部 N201教室
※申込不要、どなたでも参加できます。

※本事業は、信州大学教職大学院の授業「海外学校臨床実習」(隔年・2単位)として、信州大学知の森基金を活用したグローバル人材育成のための短期学生海外派遣プログラムの助成を受けて実施されています。

研修報告: 海外学校臨床実習2019 15日目

11月30日

今日は朝4時にホテルを出発し、イタリアのボローニャ空港からフランスのパリ空港に飛びました。パリでは、セーヌ川沿いを歩いて景色を楽しんだり、ルーブル美術館や凱旋門に行くことができました。

ルーブル美術館では、ミロのヴィーナスやサモトラケのニケ、そしてモナ・リザを見ることができました。モナ・リザは、人が多すぎて遠くからしか見ることができませんでしたが・・・。世界的な美術品の他にも、メソポタミア文明のハンムラビ法典や古代文明の様々な出土品を見ることが出来ました。

ランチは、美術館内のレストランで食事をしました。人生初のエスカルゴをいただき、その美味しさに驚かされました。


その後は、「オー・シャンゼリゼ♪」を歌いながら、シャンゼリゼ大通りを通り、エトワール凱旋門へ行きました。高さ50メートルの巨大さと483年の歴史ある建物に圧倒されました。凱旋門の真下、中央部には第一次世界大戦で犠牲になった約140万人ともいわれるフランス兵の代表として、1人の兵士が埋葬されていました。凱旋できずに戦死した無名戦士ようです。

そうこうしているうちに、もう日本に帰る時間になってしまいました。フライトは11時間と長丁場でしたが、全員無事に帰国することができました。帰国後は、待ちに待ったラーメンを食べました。だしの味がとても美味しかったです。日本食はやっぱり世界一なのかもしれませんね。
(寺岡佑夏、五味夏海)


<<おわり>>

※本事業は、信州大学教職大学院の授業「海外学校臨床実習」(隔年・2単位)として、信州大学知の森基金を活用したグローバル人材育成のための短期学生海外派遣プログラムの助成を受けて実施されています。

2019年12月1日日曜日

研修報告: 海外学校臨床実習2019 14日目

11月29日

今日は、子どもたちの笑顔と人の温かみが忘れられない1日になりました!

午前は、トゥッティフオーリという保育園のかわりとなる場所へ訪れました。
この施設は、子どもたちの五感を豊かにするため、森のアクティビティを行っています。午前・午後と子どもたちと共に原っぱに行ったり森に入ったりしたのですが、子供たちは全身泥だらけになってもお構い無しに進んでいきます。泥の水溜まりに走って入って水しぶきや音を楽しんだり、気の横に生えているキノコを触って匂いを嗅いだり、倒木に乗って綱渡りをしたりするなど、むしろ体全体で森を楽しんでいる様子がありました。子どもたちの表情はとても生き生きしており、五感を大切にすることの良さをたくさん見つけることが出来ました!そして何より、子どもたちの笑顔が素敵で、きっとこの笑顔は忘れられない思い出のひとつになるのだろうなと感じました!

お昼前に寄ったパン屋さん。
奥には大きな工場があり、一同ビックリ!
パン屋のオーナーであるジューシーさんが、私たちにたくさんパンを持たせてくれました!!美味しいだけでなく、優しさに溢れるパン屋さんで、感動しました!

お昼に施設近くの牧場に行きました。
添加物無しのナチュラルチーズが棚いっぱいに数え切れないほどあり、チーズだらけの光景に私たちは唖然でした!
熟成度合で味も変わり、熟成度合いが少ないとチーズらしい味があり、熟成すればするほど深くて少し香ばしい味がしました。
そこでいただいたバニラのジェラートは、皆さんがうなるほど美味しく、忘れられない味になりました。とっても美味しかったです。


午後は、子どもたちと森へ行き、ワークショップをしました。
目隠しをし、視覚に頼れない状況で森の中をゆっくり歩きます。音や匂い、足から伝わる土の感触がより一層際立ちました。
途中で渡される様々なマテリアルを、触感、音、匂いでリサーチします。レミダ(廃材センター)と違い、視覚に頼れない状況で、じっくりマテリアルと対話をするという、また違った面白さを感じることが出来ました。
ワークショップが終わったあとに目隠しを外した瞬間、「私たちはこんな所にいたのか!」と驚くと同時に、目隠しする前よりも森が身近に感じられたような気がしました!

その後は、イタリア最後の晩餐!ということで、近くのレストランへ。
イタリア料理を満喫すると同時に、今日はサプライズなことが!!!
なんと、青木先生のお誕生日だったのです!
イタリア最終日に、みんなでお祝いのケーキ(お店の手づくりケーキ)を食べ、私達もハッピーな気持ちになりました!おめでとうございます!!


イタリアの研修は今日で終わり、明日はいよいよ日本に帰ります。
パリでの観光も楽しみつつ、おうちに着くまでが研修!!!ということで、気をつけて帰ります。
(田中愛実)


※本事業は、信州大学教職大学院の授業「海外学校臨床実習」(隔年・2単位)として、信州大学知の森基金を活用したグローバル人材育成のための短期学生海外派遣プログラムの助成を受けて実施されています。