2015年12月29日火曜日

教育動向: No Child Left Behind Actに代わる教育法案が成立

アメリカの教育動向(久原みな子)

 連邦議会両院は12月10日、ブッシュ政権下の2002年に成立した、No Child Left Behind Act(落ちこぼれを作らないための初等中等教育法/どの子も置き去りにしない法/NCLB法)に代わる、Every Student Succeeds Act(すべての生徒が成功する法/ESSA)を賛成多数で可決し、オバマ大統領が新法に署名した。

 NCLB法は、1965年、ジョンソン大統領時に制定された初等中等教育法(ESEA)の改正法であるが、この初等中等教育法は、全ての子どもが教育を受けられるよう州に財政補助を行うこを決めた公民権法のひとつで、数年ごとに議会での見直しがされることになっている。NCLB法成立の2002年以降、全米共通学力基準であるコモン・コア(CCSS)やその到達度を測る統一テストが導入され、統一テストの結果が学校と教員の評価、連邦政府からの財政支援に結びつけられるようになるにつれ、NCLB法の画一的な方法の限界が露呈し、多くの反対運動を引き起こすまでになっていた。

 今回の改訂で、オバマ大統領は、「高い基準、アカウンタビリティ、学力格差縮小」というNCLB法の核となる目標は間違っていなかったことを確認したが、ESSAにより、統一テストの実施方法やカリキュラムなどにより柔軟性を持たせ、州と学区、教師たちに決定権を再び戻すことになった。

  • Gregory Korte. “The Every Student Succeeds Act vs. No Child Left Behind: What's changed?” USA Today, 2015/12/10. US Department of Education. “Every Student Succeeds Act (ESSA).”


2015年12月1日火曜日

教育動向: 米国で学ぶ留学生が10%増加、100万人近くに

アメリカの教育動向(久原みな子)

 米国教育省傘下の米国国際教育研究所(Institute of International Education)は、国際教育週間さなかの11月16日、国際教育に関する年次報告書 "Open Doors 2015" を発表した。それによれば、2014-2015年度、米国の高等教育機関で学ぶ留学生の数は前年度より10%増加し、過去35年間で最も多い974,926人であった。特に、インド、ブラジルからの留学生が増えていた。留学生の出身国別内訳は、中国が最も多く留学生全体の31%、続いてインドの14%となっており、韓国、サウジアラビア、カナダが続いている。日本からの留学生は、8位であった。専攻別では、ビジネス・経営学と工学が多数を占めている。

 留学生の多い上位大学は、ニューヨーク大学(13,178人)、南カリフォルニア大学(12,334人)、コロンビア大学(11,510人)となっており、アイビーリーグのみならず、全国の州立大学にも多くの学生が留学していることが明らかになった。学部生のおよそ80%、大学院生の約55%が、家族や個人の貯金に留学資金を頼っており、留学生全体で米国経済におよそ31億円の経済的貢献をしているとされる。米国から海外に留学する学生数も2013-2014年度に2008年の不況以降はじめて増加し、およそ30万人を超えた。