2015年11月4日水曜日

教育動向: ニューヨーク市、大学進学適正試験(SAT)を来年から無償化

アメリカの教育動向(久原みな子)

 10月から11月にかけて、全米のカレッジ・大学は入学願書提出時期となっている。アメリカでの大学入学者の選考は、日本のような大学を試験会場とした入学試験の結果によってではなく、事前に受験した大学進学適正試験(SAT)などの大学進学適性試験の結果を含む、様々な書類やエッセイ、推薦状などをもとに総合的に判断される。

 来年度大学進学予定のオバマ大統領の長女マリアが、アイヴィー・リーグや全米トップの州立大学の見学を終え、どこに進学することになるのかが注目されている一方で、多くの州や自治体では、この時期、カレッジ・アプリケーション・ウィーク(College Application Week大学願書提出週間)として、高校生の入学願書提出と高等教育進学をサポートしている。特に、家族内ではじめて大学に進学しようとしている「第一世代」の生徒に、無料の進学カウセリングや、出願料免除措置、入試プロセスのサポートを提供することが主眼となっている。

 こうした中、ニューヨーク市では、大学入試に必要なSAT試験を、来年度から市内の高校2年生に無料で、通常試験が行われる土曜日ではなく、平日に提供すると発表した。SATやACTを無償化し学校内で行う同様の措置は、大学進学を奨励・支援するとともに、必修の学力試験と置き換えることで高校生の受ける試験の総数を減らす目的で、すでにノース・カロライナ州、ケンタッキー州、ウィスコンシン州、コネチカット州などで導入されてきた。ニューヨークでは、SAT受験者は2015年卒業予定の生徒の約半分であり、54ドル50セント(約6千円)の試験料を市が肩代わりすることで、受験者を増やし、大学進学の手助けをするのが狙いである。これによりニューヨーク市は年間約180万ドルを負担することになる。