2016年8月20日土曜日

教育動向:教員給与と教員不足

アメリカの教育動向(久原みな子)

経済政策分析を行っているシンクタンクEconomic Policy Institute(EPI)は、8月に発表された報告書で、教員給与が、教員を除く他の大卒労働者よりも低く、さらにその差が広まっていることを指摘した。

報告書によれば、1996年から2015年の間に全労働者の平均週給が上昇したのに対し、教員の週平均給与は逆に減少していた。また、教員の平均給与と、教員を除く大卒労働者の平均給与を比べた場合、教員給与は常に教員以外の大卒労働者の給与より低く、しかもその差が最も小さかった1990年半ば以降広がり続けている。1996年には教員平均給与は教員以外の大卒労働者の平均給与より13.1%少なかったが、2015年には22.8%、週給換算で323ドル少ないものになっていた。

教員給与の問題は、教員不足と大きく関係している。人口増加の続く米国では教員の需要増加が予測されているものの、2020年代半ばまでに多くの教員が定年を迎える予定で、高い離職率、大学の教員養成課程入学者の減少を考慮すると、近い将来教員不足がさらに問題化すると考えられいる。教員不足がすでに深刻なユタ州では、教員養成プログラム卒業者でない人や教育免許のない人でも教科内容に関する知識がある場合は教師として雇用するという代替案を採用しはじめるなど、全国的に緊急に対策を必要としている学区がある。

2016年8月3日水曜日

教育動向: 民主党選挙綱領-教育政策は?


アメリカの教育動向(久原みな子)

共和党に続き、7月25日から全国大会を開いた民主党は、政策綱領を採択し、ヒラリー・クリントンを正式に大統領候補者として指名した。

Education Weekで連邦教育政策と選挙の行方を追っているAndrew Ujifusaによれば、民主党の教育政策は、K-12政策では、クリントン候補支持をすでに表明している米国2大教員組合の主張と重なる部分が大きい。例えば、オバマ政権とは異なり、統一テストの結果を学校や教師の評価と、財政支援のための検討材料として利用することを否定し、子どもに統一テストを受けさせないという保護者の権利を認めた。また、チャーター・スクールの意義を一部認めながらも、公立学校と置き換えられるものではないとし、特に営利目的の学校に関しては否定的態度を明らかにした

 オバマ政権と変わらない点としては、今年に入り議論となったトランス・ジェンダーの生徒のトイレ利用問題をうけて、改めてLGBTの生徒の権利を保証していくことを約束した。同様に、英語を第二外国語として学んでいる生徒、障がいのある生徒、人種的マイノリティーや低所得家庭の生徒への支援も引き続き表明した。また、バーニー・サンダースの主張とも重なる大学学費への支援、学生ローンへの財政支援を約束。質の高い保育の拡充と、保育教員の賃金引き上げなども盛り込まれた。