信州大学教育学部では「バーチャル教育実習」を始めました。
教育実習は4年間の教員養成課程の中でも、最も実地的な体験を積む重要な学びの機会です。教育学部を卒業して教員になって以降も、多くの人が実習で関わった学級や子供たちのことを覚えているものです。実習中に、想定したとおりに授業が進まなかったり、子供から思わぬ反応が返ってきたり、忙しい現場で少しでも良い教育を提供しようと奮闘する先生方の熱意に触れたりすることを通じて、教職への適性を考える絶好の機会でもあります。
新型コロナウィルスの影響で実地での実習が制限される中、完璧な代替措置とはなり得ませんが、少しでも学生たちの学びの糧にしてほしいという思いで「バーチャル教育実習」のコンテンツを作成しました。これは教育実習の学部補充プログラムの一部として実施しています(教育実習のすべてを「バーチャル教育実習」で代替しているわけではありません)。
教育実習では、初日から授業を担当することはまれで、多くの場合、最初の1週間は「観察実習」を行うことになります。この期間は、まずはある一人の子供に着目し、登校から下校までの学校生活の様子をつぶさに観察します。観察に慣れてきたら、子供同士のかかわりや子供と教師との関係、教材や学校空間の役割などに視野を広げて観察します。さらに、自分が教壇に立った時に、それぞれの子供たちにどのような教育的な手立てができるかを考えながら観察します。このような「観察実習」の代替として、授業の様子を録画した素材を作りました。
・教育新聞「【コロナ禍での教育実習】(下)大学や教育委員会の模索」(2020/10/29)
「バーチャル教育実習」では、2020年7月に教育学部の教職員からなる撮影部隊が附属長野小学校・長野中学校にお邪魔し、7時間分の授業を9台のカメラと2台のICレコーダーを用いて撮影・録音しました。この中には、360度カメラ(全天球カメラ)や本人視点カメラ(アクションカム)なども含まれます。
撮影・録音したこれらの素材を、教職大学院の院生を中心とする編集部隊が編集(映像と音声を合わせ、トリミングし、6本のタイミングを合わせる等)を行いました。完成したデータはYoutube Liveのマルチカメラ配信機能を使って録画しました。
360度カメラを用いることで、学生はそれぞれの視点で授業を観察できます。また、今回は児童と教師に本人視点カメラを装着してもらいましたので、まずは子供の立場から見た後で、同じ場面を大人の立場から見直すこともできます。興味の対象が目まぐるしく変わる「子供時間」を追体験し、その子供が次第に一つの教材に没頭していく様子が観察できます。また、熟達した教師が授業中に何に注目し、どのような関りをしているのかを観察することで、子供と教材を結び付けるための工夫を学ぶことができます。さらに、録画映像を繰り返し見ることで、授業の流れをつかんだうえで子どもたちの関りを細かく観察することもできます。こういった点で、実地ではできない体験が可能になりました。
デモ映像は以下の通りです。一般公開用に関係者の許可を得ています。
※マルチカメラ機能を使うにはPCでご覧ください。
360度カメラは画面上でマウスをドラッグすることで上下左右が見られます。