2016年7月6日水曜日

教育動向: トランスジェンダーと学校のトイレ

アメリカの教育動向(久原みな子)
 
 5月13日オバマ政権は、司法省と教育省の連名で、公立学校ではトランスジェンダーの生徒が自らが認識する性別のトイレを使用できるしなければならないという指針を発表した。オバマ政権は、連邦の援助を受ける教育活動での男女差別を禁止する教育改正法第 9 編(Title IX of the Education Amendments)を、トランスジェンダーの生徒にも適用するという姿勢を示したことになる。背景には、3月以降混乱を極めていたノースカロライナ州でのトランスジェンダーのトイレ使用をめぐる訴訟、また各地でも起こっていた同様の議論がある。
 
meeting room

 今回の指針は、性的マイノリティの権利を擁護する賛成派の歓迎を受ける一方で、連邦政府の行き過ぎた介入であるとする反対意見、使うトイレの性別を個人が選べるとすることで性犯罪やプライバシーの侵害を懸念する声がさらに強まり、11州が連邦政府を相手取った指針無効を求める訴訟も起こしている。
 
 また、こうした混乱の中、かねてからトランスジェンダーの学生の権利保障に熱心であったイェール大学は、ジェンダーニュートラルな誰でも使える個室トイレをジャンパス内の23の建物に合計300以上設置し、携帯端末等で簡単に検索できるシステムも導入した。同校では、ジム施設にはユニセックスのロッカールームもある。また学生の登録に個人が選んだ名前と性別を使用することもでき、性転換手術などにも学生が加入する医療保険が適用される。他校でも、昨年には、名門女性大学であるスミス・カレッジとバーナード・カレッジが、出生時の性別にかかわらず自らを女性と認識するトランスジェンダーの女性の応募・入学を認めるなどの動きが見られる。

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