2022年1月15日土曜日

教育新聞連載のご案内

「教育新聞」紙上にて、2018年7月より北欧の教育に関する連載を始めました。

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◆連載「世界の教室から 北欧の教育最前線」北欧教育研究会

北欧の教育に関心を持つ者の交流の場として2004年に始まったのが、われわれ「北欧教育研究会」。研究者や学生だけでなく、主婦、ビジネスパーソンなど、多様なメンバーが集まってファンクラブのような雰囲気で勉強会を重ねてきた。今春、そのメンバーのうち3人が子供連れでスウェーデンのウプサラ大学に赴任したのを機に、この連載を始めることになった。信州大学准教授の林寛平、金沢大学准教授の本所恵、ウプサラ大学客員研究員の中田麗子を中心に、現地の教育、子育て支援など最新ニュースをお伝えする。
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第1回 「キャッシュレス時代の算数」林寛平 (2018/07/13)
第2回 「スウェーデンの高校進学(上)」本所恵 (2018/07/27)
第3回 「スウェーデンの高校進学(下)」本所恵(2018/8/10)
第4回 「スーパーティーチャーの影」林寛平(2018/08/24)
第5回 「スウェーデン流お便り帳?」中田麗子(2018/09/07)
第6回 「何のための目標と成績か?」本所恵(2018/09/21)
第7回 「インターネットで学校が買える」林寛平(2018/10/05)
第8回 「増える学校の特別食」中田麗子(2018/10/19)
第9回 「敬称改革(Du-reformen) 先生に『やあ、モニカ!』」林寛平(2018/11/02)
第10回「スウェーデン版チーム学校」本所恵(2018/11/17)
第11回「最優秀学校給食を目指せ!」中田麗子(2018/11/30)
第12回「ひとりぼっちのクリスマス」林寛平(2018/12/16)
第13回「宿題ポリシー」林寛平(2018/12/30)
第14回「体育の授業増で学力向上?」本所恵(2019/01/20)
第15回「極夜の国の登下校」中田麗子(2019/01/27)
第16回「入試がない国の学校成績」本所恵(2019/02/10)
第17回「『オスロ朝食』からランチパックへ」中田麗子(2019/02/24)
第18回「みんなのアントレ教育」林寛平(2019/03/10)
第19回「『0年生』から始まる義務教育」本所恵(2019/03/24)
第20回「スウェーデンの英語教育」中田麗子(2019/04/07)
第21回「エデュ・ツーリズムと視察公害」中田麗子(2019/06/09)
第22回「高校中退のセーフティーネット」本所恵(2019/05/26)
第23回「思考力を育み評価する高校の試験」中田麗子(2019/06/09)
第24回「フィーカと授業研究」林寛平(2019/06/23)
第25回「スウェーデン人が見た日本の算数」林寛平(2019/07/07)
第26回「人を貸し出す図書館」佐藤裕紀(2019/07/21)
第27回「無理しない行事の工夫」矢田明恵(2019/08/03)
第39回「教室のおしゃれ家具の裏事情(前編)」林寛平(2020/02/07)
第47回「お誕生会は一大事!」中田麗子(2020/05/30)第62回「探究学習でウィキペディア執筆」本所恵(2021/01/04)
第63回「教育改革で多忙になったデンマークの教師たち」原田亜紀子(2021/01/16)
第64回「平和の担い手を育てる体系的な取り組み」田中潤子(2021/01/30)本紙人気連載「北欧の教育最前線」 書籍化され発売開始(2021/03/02)
第82回「スウェーデンの性教育とユースクリニック」太田美幸(2021/10/09)
第83回「学校向けに多数のサービス ノーベル賞博物館」本所恵(2021/10/23)
第84回「放火や対教師暴力 SNSで広がる学校の荒れ」林寛平(2021/11/06)
第128回「入学を勝ち取るために住所を変える デンマーク」佐藤裕紀(2023/07/22)
 
※記事は第1回のみ無料で閲覧できます。

2021年8月26日木曜日

日本教育学会奨励賞を受賞しました

2019年に日本教育学会の機関紙『教育学研究』に掲載された論文に対して、日本教育学会から奨励賞が授与されました。

日本教育学会奨励賞

授賞対象は以下の論文です。

林寛平「比較教育学における「政策移転」を再考するーPartnership Schools for Liberiaを事例にー」日本教育学会(編)『教育学研究』第86巻第2号, 2019, pp.213-224.

要旨は以下からご覧いただけます。
https://shinshuedu.blogspot.com/2019/10/blog-post_10.html

本文はJ-STAGEからダウンロードできます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyoiku/86/2/86_213/_article/-char/ja/



(以下、2021年8月26日追記)

例年、授賞式は学会大会の場で行われていますが、新型コロナウィルスにより大会がオンライン開催となりました。そのため、2021年の大会時に授賞セレモニーが行われました。

授賞理由 

本論文は「教育の輸出」事象が広がりを見せていることに着目し、これまで比較教育学が用いてきた「政策移転」や「政策借用」という概念で想定されていたこととは異なる事態が生じていることをリベリアの公立学校でのアウトソーシングの事例分析を通じて明らかにしている。具体的には、従来の政策移転論は、その政策が移転先において「土着化」「再文脈化」したり、淘汰・絶滅したりする段階へ至るものと把握されてきたのに対して、近年の「教育の輸出」では、輸出側の収益優位性を保持するために、「土着化」を阻害し続ける作用が働いており、比較教育学はそうした現象を捉えうる新たな枠組みの構築を必要としていることが考察されています。

教育の国際開発で起きている最新の事象を取り上げて、新しいデータを収集・分析することによって、比較教育学の研究方法論を再考しようとする挑戦的な研究という点で高い学術的意義が認められます。また、「政策移転」の分析枠組みを捉え直すことにとどまらず、近代公教育と国民国家形成を結び付けた教育理解のあり様を転換する必要性をも示しており、教育学研究に広くインパクトを及ぼす可能性を有するものです。

教育のグローバル化が進展する中で、教育の輸出と輸入は政治性と商業性を帯びてさらに広がっていくことが予想され、本論文は教育学研究に有益な示唆をもたらすとともに、将来的発展を大いに期待できるものと考えます。

よって本論文は奨励賞に値すると判断されました。
(奨励賞委員長・浜田博文先生)

※抜刷を無料でお送りします※

2021年3月25日木曜日

研究紹介: スウェーデンの離学予防・復学支援策

林寛平・本所恵「スウェーデンの離学予防・復学支援施策」, 園山大祐(編)『学校を離れる若者たち ヨーロッパの教育政策にみる早期離学と進路保障』(ナカニシヤ出版, 2021)


 スウェーデンの離学対策の特徴は、切れ目のない施策にある。基礎教育を受ける権利と義務、高校進学で挫折した人への補充教育、高校中退予防、そして、取りこぼした人をすくい上げる成人教育がある。これにより、希望すればほぼすべての人が高校卒業を目指せる制度が整えられている。また、病気や障害で学業を中断せざるをえなくなった人には現金給付があり、セーフティネットが広く張られている。加えて復学に向けたインセンティブが仕組まれていて、就労も就学もしていない若者に学業に復帰する動機を与えようとしている。本章では、スウェーデンにおける切れ目のない支援体制を描出するために、対象者の法的定義と統計を整理し、政策の重要な転換点を踏まえたうえで、離学・復学施策の特徴を検討する。(「はじめに」より)

書誌情報 (amazon.co.jp)
 書名: 学校を離れる若者たち ヨーロッパの教育政策にみる早期離学と進路保障
 出版日: 令和3(2021)年3月31日
 出版社: ナカニシヤ出版
 編者: 園山大祐

2021年3月24日水曜日

【在宅留学】ウプサラ大学とのオンライン共修

 信州大学教育学部ではウプサラ大学教育学部(スウェーデン)と共同でオンライン国際共修授業「Education in Global Perspectives (EGP)」を開講しました。コロナ禍で海外渡航が制限される中ですが、2020 (令和2)年度には日本とスウェーデンから30名弱の学部生・院生が受講しました。授業の主な内容は、①講義②グループワーク③ビデオ交換プロジェクトの支援の3点にまとめられます。



授業担当者による講義

 この授業では、双方向の関わりを通じて、教育学部生らしい専門的な内容を習得することを目指しています。講義では比較教育学を専門とする授業担当者が日本とスウェーデンの教室文化の細かな違いを取り上げ、その歴史や背景を解説しました。例えば、日本の学校でよく見かける飼育小屋やプールなどはスウェーデンの学校ではほとんど見かけません。職員室の雰囲気も全く異なっています。先生の呼び方や保護者とのかかわり方、教育実習の期間や実習生の立場なども大きく異なります。インフルエンザでの学級閉鎖や運動会の玉入れもスウェーデンではありませんし、保健室やカウンセラーの機能も様々です。給食のメニューや給食指導(残り物のじゃんけんなど)も考え方の違いが現れています。これらの日常的なトピックを取り上げて、両国の学校がどのような価値観をもって指導しているのかを考えました。



グループワーク

 EGPでは月に1度の頻度で講義を行いましたが、講義の合間には両大学の学生がグループを作って作業や議論を行いました。最初の課題は、「日本人がスウェーデンで教員になるには」「スウェーデン人が日本で教員になるには」でした。各グループでは、関連法規や採用試験の内容を調べ、国籍要件があるかを確かめました。そのほか、平均給与や労働時間の統計データや教職の志望動機のアンケート結果などを示しながら、両国の状況を比較しました。
 次に、それぞれの国で用いられている教科書や教材を持ち寄り、小学校の授業を撮影したビデオを観ながら指導方法や教員の働き方の違いや共通点について話し合いました。教育実習を経験した学生は実習先で書いた指導案を紹介し、両国の着眼点の違いを議論しました。スウェーデンの教科書では登場するキャラクターをもっぱら動物で表現し、中性的な名前を使うなど、ジェンダーに配慮した編集になっています。一方、日本の教科書では男女の児童が登場し、1人の先生と問答をしながら展開してく構成になっています。これに対してウプサラ大学の学生からは、スウェーデンでは複数の教員でチームを組んで教えることが多いため、一人の先生が首尾一貫して教えているのは違和感がある、という意見がありました。


ビデオ交換プロジェクトの支援

 グループワークのハイライトは児童によるビデオ交換プロジェクトのサポートです。附属長野小学校6年生では、英語活動の一環としてストックホルム郊外の基礎学校(Saltsjöbadens Samskola)の子供たちとビデオ交換を行いました。奇数月には日本からスウェーデンへ、偶数月にはスウェーデンから日本へビデオを送りあうというものです。両校では4人程度の班を作り、班ごとに英語のビデオを製作しました。小学校6年生にとって、英語で説明をしたり、相手の英語を聞き取ったりすることは容易ではありません。そのため、信州大学のEGP受講生は毎週月曜日と木曜日の朝にZoomで6年生の教室とつなぎ、遠隔でビデオ作りをサポートしました。また、スウェーデンでも同様に、Samskolanのビデオ作りをウプサラ大学の学生がサポートしました。
 3月10日には、ビデオ交換プロジェクトとEGPのまとめとして、児童と学生が参加するリアルタイム・ミーティングGlobal Friends Meet Upを開催しました。Meet Upでは、学生が児童と協力してZoomを運営し、各班でのゲームや交流活動を両国の学生がサポートをしました。附属長野小学校の6年生にとっては卒業式1週間前という時期でしたが、小学校最後の思い出として、緊張感と達成感に満ちた会になりました。また、EGPの受講生にとっても、これまでの国際共修で培った関係性を活かして、海外の学生と一緒に企画する貴重な経験となりました。


 この授業では、信州大学の学生には信州大学から、ウプサラ大学の学生にはウプサラ大学から単位が付与されます。信州大学教育学部とウプサラ大学教育学部は2019(令和元)年11月に国際交流協定を締結し、留学生の相互受け入れを始めています。併せて、信州大学・金沢大学・ウプサラ大学の3者でコンソーシアムを組み、国際交流の促進に取り組んでいます。


受講生のコメント(抜粋・一部改変)

  • 在宅で留学が出来るという点に惹かれたことがこのプロジェクトに参加しようと思ったきっかけでした。私には留学経験も教育実習の経験もなく、しかも英語に対して苦手意識を持っているため、授業について行けるか、きちんと子供たちをサポートしていけるのか不安がありました。特に、ウプサラ大学の学生との授業は、リアルタイムで英語が飛び交う状況に毎回とても緊張していました。しかし、子供たちとの関わりやウプサラ大学、信州大学の学生との交流を通して、他の方の楽しそうな表情やあたたかい雰囲気に何度も感動し、この輪の中に自分も思い切って飛び込んで良かったと思いました。そして、英語を使いこなす先生や他の学生の様子に刺激を受け、自身の英語の力をさらに高めたいと強く思いました。この授業は、将来的に英語を使おうと考えている方はもちろん、英語に苦手意識を持っていたり自分の意識を変えるきっかけを掴みたいと考えていたりする方も参加する価値がある授業だと考えます。英語が苦手な身として不安もたくさんありましたが、短くつたない英語でも相手に伝わったときや、子供たちとの活動で英語のサポートが出来たときの喜びはとても大きく、それが自分自身の力にもなりました。本当に楽しかったです。ありがとうございました。
  • 活動が多岐に渡り、さまざまな思考力が養われたと思います。特にこの授業の中心であるウプサラ大学の学生との交流では互いの教材や教育文化を語るだけでも文化的、社会的な背景からくる教育観について学べました
  • 子どもたちと実際に関わる授業がEGPだけでしたので貴重な経験になりました。班の子たちをどうサポートしたらいいのか不安でしたが、先輩と2人で1つの班を担当できたのが心強かったです。大学生同士の授業では、スウェーデンの授業実践についてだけでなく、先輩方の授業実践についても少しお話いただけて非常に勉強になりました。スウェーデンの教育にも興味を持てました。ありがとうございました!
  • 私の班は、最初のビデオ交換の段階では、すべての翻訳を大学生が行っていました。しかし、ビデオ交換の回数を重ねていくと、一緒に届いたビデオを見ていても子供たちが聞こえた文や単語を自力で理解しようとしていた姿に成長を感じました。そして、それによって次のビデオをさらに意欲的に考えるようになり、中身の濃いビデオが作られていったと思います。特に、こちらから投げかけた話題について返答してもらい、追加で新たな質問が来るとその答えを楽しそうに考えていたことがとても印象的でした。私も嬉しかったです。時間が経つにつれ、大学生との距離が縮まったことで意見を言いやすくなったのかもしれませんが、スウェーデンの子供たちとのやり取りを通して、長野小の子供たちの英語力の成長だけでなく気持ち的な面でも変化があり、それがより積極的な活動へ繋がったのではないかと考えます。子供たちのビデオ交換プロジェクトは良い活動だと思います。私も子供たちの成長を間近で感じることが出来ました。
  • Thank you for making this course possible. It has thought me a lot, and I have also gained many new perspectives.
  • 子ども達は、それぞれ伝えていこと、またスウェーデンの子どもからの質問への返答を中心に考えていました。メッセージを発信して、受け取って返答する、そのやりとりが時間と場所を超えて行われていたこの活動は、見ていて面白かったです。 現代はYouTubeなどで海外の様子などは簡単に触れることができますが、このプロジェクトのようにコミュニケーションの相手として海外の人に触れることは貴重な機会だと思います。ある程度近い存在としてスウェーデンの人たちのことを感じられたのではないでしょうか。そんな近い存在を通して感じる海外は、彼らにとってとても貴重な経験になったと思いますし、海外という存在が近くなったのではないかと思います。
  • 小学生同士の国際交流に関わったり、参観できたりしたことは、今後英語教育に携わる上でとてもよい経験となった。最初は英語も、ビデオづくりも小学生には難しいのではないかと思っていたが、想像以上に子どもたちには力があり、回を重ねるごとにビデオの質も上がっていった。Zoomということで子どもたちの意図を全てくみ取ることは難しかったが、それでも一員として関われてよかった。
  • 初めは正直日本の児童がどこまでビデオを作れるのか不安なところもありました。自分たちでつくり、スウェーデンの子どものビデオに圧倒され、それでも自分たちなりに工夫していこうと自己調整する姿が良かったと思います。国際交流の新たな方法としても勉強になりました。ビデオ交換に限らず、学校のカリキュラムマネジメントとして考えていく必要のあるところですが、教科・領域の指導の中で相手意識をもつための時間がもう少しあれば、ビデオの内容に更なる展開もあると、可能性を感じました。
  • Pupils were engaged in the activity. It also boosted their confidence in English communication.
  • 大学生同士の英語はスピードが速く使う言葉も難しかったので、楽しむというよりは緊張感を持って参加していました。信州大学の先生や先輩の方の英語を聞いて、こんなにも英語を使いこなせる人がたくさんいるのかと驚きました。私は、授業中はついて行こうとひたすら必死だったのですが、授業後に内容を振り返ると、失敗よりも他の学生の方のあたたかさや授業の楽しさをたくさん思い出して、参加して良かったと毎回思っていました。私の英語はまだまだ日常的に使えるものとはいえないので、その場その場での英語のやり取りには多くの課題が残っています。しかし、自分の考える授業案をプレゼンし合ったときに、ウプサラ大学の学生が私の授業内容を面白いと言ってくれて、自分の英語がきちんと伝わっていたことと教育の面でも先輩の方々に自分の考えを褒めていただけたことがとても嬉しく印象に残っています。スウェーデンと日本の学校の文化や制度などの違い、先輩の方の考えをたくさん知り吸収でき、教育を学ぶ者としても大学生同士の授業には刺激を受けました。
  • (Global Friends Meet Upについて)同じ班の大学院の先輩と当日に向けて話したとき、不安な点があるということだったので、子供たちが緊張しすぎず楽しめるか、私もきちんと支えられるか心配していました。はじめはぎこちない部分もありましたが、お互いに質問し合ったりちょっとしたミスも一緒に笑い合ったり出来たことで、子供たちの中に良い雰囲気が生まれたと感じました。長野小の子供たちは、ジェスチャーゲームや質問を通して、英語が伝わったことをとても喜んでいるように見えました。特に、Samskolanの子がスウェーデンの首都を聞いてきたときに、正解を答えた子がこれまでの活動の中で一番嬉しそうな顔をしていたことが印象的でした。それが私も嬉しかったし、喜んでいる長野小の男の子の様子を見てサムスコラの子供たちも楽しそうでした。翌日の振り返りでも挙がっていたことですが、コミュニケーションは、言葉がなくても生まれるのだと実感しました。言葉が足りなくても、うまく話せなくても、言葉以上に伝わるコミュニケーションがあり、そこから喜びや楽しさが生まれることを私も子供たちから学びました。そして、反省としてこれから子供たち自身の英語を向上させていきたいと話し合っていましたが、それを伸ばすにあたり、今回のプロジェクトの楽しかった思い出や嬉しかった気持ちを力にして欲しいと思いました。
  • (Global Friends Meet Upについて)子どもたちが時間が足りないと思うような会を開くことができ、これからの英語学習のモチベーションになるような経験になったと思う。様々な人が関わる会だったので、準備段階ではそこの共通理解が大変だったが、関わることができてよかった。私も楽しめた。
  • (Global Friends Meet Upについて)It was wonderful. I was surprised by pupils' passion to communicate. Despite the difference in English ability, all the students in my group were having fun. I am certain that it will be a great incentive for students to learn English.
  • (Global Friends Meet Upについて)小学生、大学生ともにリアルタイムのミーティングは10回のメールより価値があると思います。

【担当者・協力者】(敬称略)

2021年3月10日水曜日

研究紹介: スウェーデンはなぜ一斉休校にできなかったのか

田平修・林寛平「コロナ禍におけるスウェーデンの学校教育」日本比較教育学会(編)『比較教育学研究』62, 2021, pp.41-58.


Shu TABIRA & Kampei HAYASHI (2021) Swedish Schools during COVID-19 Crisis, Bulletin of the Japan Comparative Education Socitety, 62, pp.41-58.


本書はこちらからご購入いただけます。


新型コロナウイルス感染症の拡大により各国が都市閉鎖や一斉休校に向かう中、スウェーデンは特異な対応を採ってきた。この間、国内での賛否両論はもちろんのこと、米国のトランプ大統領がTwitter上で批判したり、「ノーガード戦法」と揶揄されたりするなど、各国から大きな関心を集めてきた。

スウェーデン政府は新型コロナウイルスを「社会的脅威(samhällsfarlig)」とし、感染拡大を抑制することで人々の生活、健康、仕事を守ることを目指した。王室もビデオメッセージを公表するなどして、危機感を共有してきた。しかし、他国が非常事態を宣言して行政府の裁量を拡大する中で、スウェーデンでは法改正と強制力を伴わない「勧告(rekommendation)」を組み合わせた穏やかな対応が採られた。スウェーデンは平時の延長として新型コロナウイルスに対峙してきたと言える。特に、個人と社会の両方を守ることを掲げ、リスクの高い人を隔離し、それ以外の人には感染症対策の上、これまで通りの活動を推奨した点が特徴的である。

これらの対応は主に感染対策法と労働環境法、そして公衆衛生庁が2019年に策定したパンデミック準備計画に基づいている。準備計画はインフルエンザを想定したものだが、新感染症全般に応用できる内容で、パンデミックへの備え、コミュニケーション計画、薬へのアクセスと利用の3部構成となっている。このうちコミュニケーション計画では、情報が錯綜することで無用な混乱や政府への不信感を生まないよう、各機関の役割を明確にすることが示されている。その原則は以下の3点に要約される。

責任原則: 通常時の事業責任者が危機時にも責任を持つ。部門間で協働する際も同様
平等原則: 危機時の活動はできる限り通常時と同様に行うべき
近接原則: 危機は、それが発生した場所で、最も影響を受け、かつ責任のある者によって対応されるべき

世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言すると、公衆衛生庁は3月17日には高校や大学等は通信授業に移行するよう勧告した。高校生以上は学校に集まらなくても授業ができることから、感染拡大を予防し、最も脆弱な人が医療を受けられるようにするためだと説明された。また、高校生や大学生等は幼い子供と違ってケアが必要ないことや、授業集団が大きいことが理由として挙げられた。

プリスクールと基礎学校は、一部の自立学校(運営費の大半を公費で運営される私立学校)が独自に閉鎖した例や、生徒や教職員から感染者が出た学校を除き、全国的な休校にならなかった。公衆衛生庁は学校閉鎖が感染拡大のリスクを減らすという科学的な根拠はないとして、子供を自宅に待機させるのは効果的な対応ではないと考えていた。これに加えて、休校を措置する法的根拠がなかったこと、教育を受ける権利と義務の扱い、学校の保育機能に関する議論、学校の福祉的機能に関する議論などが背景にあった。

教育法では、学校教育の目的を「学校における教育は子供と生徒が知識と価値を獲得し、発展させることを目的とする。これはすべての子供と生徒の生涯にわたる学習意欲を促進するものである。教育はまた、スウェーデン社会が基づく人権と基礎的な民主主義的価値を尊重することを伝え、定着させるものである」としている。また、これに続けて「教育は子供と生徒の多様なニーズを考慮に入れなければならない。子供と生徒は可能な限り成長するように支援と刺激が与えられるべきである」とうたわれている。本稿では、パンデミック下において、スウェーデンの学校がこの目的達成にどのように取り組んできたのかを整理し、この間の議論の背景にある制度や思想を考察する。(「はじめに」より)


はじめに
1. なぜすぐに休校にできなかったのか
2. なぜいまだに休校しないのか
 (1) 教育を受ける権利と義務の扱い
 (2) エッセンシャルワーカーのジレンマ
 (3) 学校の福祉的機能の維持
3. 学校はどう変わったか
 (1) ニューノーマルと教員の過重負担
 (2) 子供の知る権利の保障
 (3) ウィズ・コロナの授業
おわりに

2021年2月24日水曜日

市民講座「北欧の教育と共生社会」のご案内

 新刊『北欧の教育最前線ー市民社会をつくる子育てと学び』(明石書店)を出版したところですが、これにあわせて、北翔大学の市民講座に登壇します。市民講座では、新刊の内容をベースに、紙幅の都合で書ききれなかったことなどを交えてお話しします。また、ご参加の皆さまから関心のあるテーマを伺い、ディスカッションしたいと計画しています。オンラインでどなたでも無料で申し込めますので、ぜひご参加ください。

「北欧の教育と共生社会」
(北翔大学札幌円山キャンパス 北方圏学術情報センター連続市民講座)

【日時】 2021年3月6日(土) 14:00~15:30 (13:50開場)
【内容】(予定につき、変更になる場合があります)

■林寛平(信州大学)

権威を嫌い、立場を超えてお互いを尊重しようとする北欧社会。学校では先生も呼び捨てにされます。「敬称改革」の時代背景や思想についてお話しします。

■中田麗子(東京大学)

アレルギーや宗教上の理由などから、学校給食の特別対応が増えています。スウェーデンではどのような取り組みをしているのか、理想と実態をお話しします。

■本所恵(金沢大学)

スウェーデン語がまったく話せない息子を学校に通わせた経験を踏まえて、支援の必要な子にどのように配慮しているのかをお話しします。「ダウン症の日」(3月21日)の事例から、共生社会の実現に向けた身近な取り組みを紹介します。

■ディスカッション

企画者の石塚誠之(北翔大学)のファシリテーションにより、北欧の事例を私たちの社会でどのように取り入れられるのかを議論します。参加の皆様の活発な議論を期待しています。

【申込】以下のURLから事前にお申し込みください。お申込みいただいた方にZoomのURLをお知らせします。

http://bit.ly/2NpIbgb

皆さまのご参加をお待ちしております。

2021年2月4日木曜日

研究紹介: 北欧の教育最前線-市民社会をつくる子育てと学び

北欧教育研究会編(2021)『北欧の教育最前線-市民社会をつくる子育てと学び』明石書店


書籍はこちらからご購入いただけます(2021年2月28日発売予定)。


 みなさんは、学校の体育館の壁に、何列も平行に並んだ木の棒が設置されているのを見たことがありますか?「肋木」(ろくぼく)という名の体操器具ですが、登ったり、足をかけて逆さ吊りになったりした人もいるでしょう。あるいは、タオル掛けとして使った人の方が多いかもしれません。体育でよく使われる跳び箱や平均台、肋木は戦前にスウェーデン体操の道具として導入されたものです。それ以来100年以上にわたって日本の体育指導に使われてきました。今となっては、自然な風景として学校に溶け込んでいます。

 子どもから大人まで大人気のムーミンは、フィンランド発と思われがちですが、原作はスウェーデン語で書かれています。当初の作品では毒々しく、醜いキャラクターでしたが、これをカラフルに、ポップに愛らしく表現したのは日本のアニメ制作会社でした。原作者のトーベ・ヤンソンは色付けに不満があったようですが、フジテレビでのアニメ放送がなければ、いまのような世界的なキャラクター・ビジネスは成立していなかったかもしれません。

 地理的には遠い北欧ですが、その影響は意外と私たちの身近にあります。本書では、魅力たっぷりの北欧の教育を紹介するとともに、その「最前線」で私たちと同じように悩み、奮闘している様子を等身大でお伝えしたいと思います。また、原稿の執筆にあたっては、研究者としての専門性も踏まえて、理想的な面だけではなく、その成り立ちの歴史や文化、社会を少しでも深掘りして、立体的に理解できるように書くことを心がけました。

 本書出版のきっかけは、『教育新聞』での連載「世界の教室から 北欧の教育最前線」にあります。北欧教育研究会のメンバー3人が子連れでスウェーデンのウプサラ大学に赴任したことを契機に、2018年に始まりました。本書はそれらの連載記事を再編集し、さらに書き下ろしの原稿を加えて刊行するものです。

 全体は5章立てになっています。第1章は本のタイトル通り「北欧の教育最前線」として、みなさんにまず読んでいただきたい特徴的なトピックを集めました。第2章は「伝統と革新」です。北欧の教育の歴史や思想に触れて、「どうしてそうなっているのだろう?」という疑問にお答えします。第3章は「日常の風景」です。本書の狙いでもある「生活者目線」で書いた原稿を集めました。魅力いっぱいの北欧ですが、そこに暮らす人々は普段どのような生活をしているのでしょうか。第4章は「課題と挑戦」です。日本と共通した課題や、日本への示唆が得られるような挑戦を取り上げます。

 第5章は「光と影」です。理想郷のように見られる北欧ですが、その裏には私欲まみれのスキャンダルもあります。本書の最後に、人間らしいドタバタ劇をお示しすることで、少しでも北欧への親近感を感じていただければと思います。このように章立てをしていますが、もともとコラムとしてそれぞれの原稿が独立していたものなので、どこから読み始めていただいても結構です。目次をご覧いただき、気の向くまま、興味のある章から読み始めてください。

 題名どおり、本書は最新事情を扱っています。そのため、内容はすぐに古くなってしまうかもしれません。しかし、「今」のひとつひとつの出来事は、これからの教育を占う経験として活用されるでしょう。その意味で、本書が皆様の理解に少しでもお役に立てると嬉しいです。

 北欧教育研究会は2004年に始まった「ファンクラブ」です。研究者や学生だけでなく、主婦やビジネスマンなど、多様なメンバーが集まって情報交換や勉強会を重ねてきました。本書でも随所で説明されるように、北欧は権威主義を嫌います。そのような社会に魅せられた私たちも、一部の「専門家」が独り占めするのではなく、「みんなの北欧」をそれぞれの好みで嗜む会を作りたいと思っています。この本を手に取ってくださったみなさんも、機会がありましたら、研究会にぜひご参加ください。

 本書の編集は、連載チームでもある林寛平、本所恵、中田麗子、佐藤裕紀が担当しました。みなさんの感想を聞ける日を楽しみにしています。(「はじめに」より)


書誌情報 (amazon.co.jp)

 書名: 北欧の教育最前線ー市民社会をつくる子育てと学び
 出版日: 令和3(2021)年2月28日
 出版社: 明石書店
 編者: 北欧教育研究会