2016年10月7日金曜日

EDU-JPN: IJIME- the Widespread Bullying Problem in Japan

Education in Japan (Natalie Collar)

In Japanese society, skills like fitting in with one’s surroundings and thriving within a group are very highly regarded. Rather than the differences, it is the similarities of people that are evaluated, and it is thought that conformity is more important than individuality. If one cannot fit in, one will be isolated within the group or, on the other hand, one will be removed from the group and put into a different one. 
 
Classroom
While bullying undoubtedly exists around the world, this type of society lends itself to see high percentages of bullying in all levels of schools. According to a recent study by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT), in one year, the known bullying incidents in all school levels totaled 188,057, an increase of 2,254 cases from the previous school year. The percentage of schools that were aware of bullying cases was 56.5%. 
 
Severe cases of ijime lead to children dropping out of school, having suicidal thoughts, and acting out at home. The most extreme, yet common, result of bullying is suicide, one that cannot seem to escape mainstream news in Japan. 
 
The national government and bullying specialists have been overwhelmed by the complicated nature of this problem, and the nation is unaware of a clear solution, but parents are encouraged to get involved in solving the issue of bullying at school. Although bullying is regarded by most as a problem of the school, many specialists believe that parents ought to take an active role in communicating with the child’s home room teacher as soon as they become aware of their child being bullied. 
 
While it is incredibly unlikely that any school does not have a single case of bullying, the schools that are able to resolve bullying issues are thought of highly. In fact, it bodes well for the teacher, the school, and the community. 
 
Several local governments are getting involved in promoting awareness of the importance of eradicating ijime for good. After the 2012 bullying incident in Shinagawa that ended in the child’s suicide, the local board of education, teachers and the PTA lobbied for change. The school system, along with the help of students from each school, created original anti-bullying badges and a total of 40,000 badges were made. The students, parents, and teachers wear their badges twice a month to show in an effort to raise awareness and end cases of bullying in their schools.
 
 
 
 

2016年9月28日水曜日

研究紹介: 学級経営の国際比較

林寛平「学級経営の国際比較―スウェーデンと日本の授業スタイル」, 末松裕基・林寛平(編)『未来をつかむ学級経営:学級のリアル・ロマン・キボウ』(学文社, 2016)


 本書『未来をつかむ学級経営:学級のリアル・ロマン・キボウ』は、学級経営の実践と理論について、現代の具体的な課題と取り組みを分析・紹介するとともに、原理的な内容も丁寧に論じて、広く読み継がれる図書を目指した。
 第Ⅰ部では、現代の学級経営の課題と特徴、また、それに対応するための先進的な取り組みについて分析・紹介し、具体的には、小・中学校の事例、学級づくりの具体的かつ最新の取り組みや方法さらには、学級づくりの修羅場を志をもって第一線で活躍してきた教員がその実践哲学を論じ、課題意識、アイデアや、現職教員が読んで日々の課題解決に生かせる内容となっている。第Ⅱ部は、学級経営について、「哲学」「制度・歴史」「理論」の視点から原理的に考え、第Ⅲ部は、学級経営について、各国の特徴、課題、取り組みを論じ、それらを通じて、読者が世界的視野のもと日本との違いや独自性を理解してもらうことを意図した。(「はじめに」より抜粋)

 <第9章のさわり>

北欧の教室ではグループ授業や個別学習が盛んに行われている。フィンランドはOECD生徒の学習到達度調査(PISA)で世界一の成績を修めたことから、世界中の教育関係者が「フィンランド詣で」をし、成功の秘訣を探ろうとした。この際、ドイツ人は単線型の総合制学校のメリットに着目し、スウェーデン人は教室の落ち着いた雰囲気と教師の権威に着目した。これに対して、日本の教員の多くは授業方法に着目した。ある教育学者は「机の並べ方は、教室によってまちまちだ」「教師の教えやすいよう、個々人に対応するために機敏に、適切に指導できるように机が配置されている。高学年になるほど、グループ学習が多く取り入れられているようだ」と記録している。この視点の違いは、欧州内外から見るフィンランド像の違いによるものだろう。欧州内ではフィンランドは他の欧州諸国と比べて生真面目な国民性と思われている。一方、欧州の外から見た場合は、フィンランドの教室に欧州的な特徴を見出そうとする。欧州の教員にとって、グループ活動は自分たちの日常でもあり、取り立てて異質のものとは映らなかったのかもしれない。
 では、北欧では、いつごろからグループ学習や個別学習が一般的になっているのだろうか。スウェーデンにおける授業形態の変化をみると、1960年ごろには6割を占めていた一斉授業が、1980年になると5割になり、グループ学習が増加している。さらに、2000年には一斉授業の割合は4割強に減少し、グループ学習から個別学習への移行が見られる。類似の傾向はほかの北欧諸国でも見られる。本章では、スウェーデンと日本を比較しながら、日本の学級経営論の特徴について論じたい。

書誌情報 (amazon.co.jp)
 書名: 未来をつかむ学級経営:学級のリアル・ロマン・キボウ
 出版日: 平成28(2016)年9月28日
 出版社: 学文社
 編者: 末松裕基・林寛平

2016年9月24日土曜日

教育動向:“しらふの週末”-大学キャンパスでの飲酒・喫煙・ドラッグ問題



アメリカの教育動向(久原みな子)

ミシガン大学の研究者たちが今年7月に発表したドラッグ使用に関する調査、Monitoring the Future: National Survey on Drug Use 1975-2105によれば、マリワナを過去12ヶ月間に使用した学生は、2006年の30%から2015年には38%に増加した。この数年、コロラド、オレゴン、ワシントン、アラスカの4州とワシントンDCで娯楽用マリワナが相次いで合法化されたことにより、マリワナ使用に対する態度が全国的に寛容になってきている、とこの調査報告書の著者のひとりは語っている。

一方、長年、様々な視点からいろいろな大学ランキングを発表しているプリンストン・レヴューは、今年も「パーティ・スクール(飲み会などのパーティが多い大学)」ランキングを発表した。このランキングの信憑性については多くの大学が疑問を呈しているが、キャンパスにおける飲酒・喫煙・ドラッグ問題は、大学にとっても無視できないものとなっている。

そのような中、2004年にはパーティ・スクール・ランキングで首位となり、また娯楽用マリワナが合法化されているコロラド州にあるコロラド大学ボルダー校では、今年で9年目となる大学主催の「Live Free Weekendしらふの週末」イベントが9月22日から26日まで行われる。木曜の正午から月曜の正午までを、飲酒・喫煙・ドラッグ使用なしにしらふで過ごそうというこのイベントは、学生をはじめ大学関係者や地域の人々が、個人またはグループでこの期間をしらふで過ごすという誓いをオンラインで行い(任意)、各自の飲酒やドラッグ使用、健康、ライフ・スタイルを見直す期間となっている。また、大学施設を使って、スポーツの試合、星空のもとでのヨガ、ボルダリング、講演、映画上映など、お酒やドラッグに頼らずに学生が過ごせるイベントが目白押しとなっている。オンラインの「しらふの誓い」は昨年にはおよそ2000人が参加した。



2016年9月18日日曜日

研究紹介: 移民生徒の学習権保障

林寛平「スウェーデンにおける外国人生徒の学習権保障」, 園山大祐(編)『岐路に立つ移民教育: 社会的包摂への挑戦』(ナカニシヤ出版, 2016) 


 2015 年夏には,ヨーロッパにおけるシリア難民の受入れ問題を通じて,我が国でも広く「人の移動」について再考を迫られた。短期的な受入れと同時に,長期的にはどのような共生社会を描くかという政治的判断も考えなくてはならないだろう。こうしたなか今日みられる排外主義,人種主義,ナショナリズムの台頭は,日本においても多文化共生政策,あるいは国際理解教育や外国人の受入れを後退させる可能性がある。人道主義に立脚し,寛容な社会とされたオランダやスウェーデンにおいても排外主義や極右の台頭は,イスラモフォビアと混同されたり,すり替えられる危険がある。そのため再度異文化間,または宗教(道徳や市民性)教育との関連について各国の政策の変遷を整理する必要があると考える。今一度,ヨーロッパ諸国間の比較研究の重要性が再確認されたのではないだろうか。
 本書を通じて,ヨーロッパの移民問題の多様性について理解を少しでも促進することができれば幸いである。またそうした西欧諸国の課題にも言及しながら,我が国の教育施策や実践のあり方について一定の示唆を提供することができればと考える。国際比較研究の意義である諸外国の事例を並置比較することから,何らかの法則やモデルを導き出すことに少しでも貢献できればと願っている。また学生や現場教員にも読みやすくなるようコラムを設け,現場の声をいれたり,付録を作成し,各章では十分に触れられなかった教育制度,教育統計,基本文献,映画情報などを掲載している。(「まえがき」より抜粋)

 <第7章ガイダンス>

  2015 年に起きた欧州難民危機では,シリア人をはじめ,中東,アフリカ,南アジアなどから多くの難民が欧州諸国に流れ込んだ。ハンガリーなどでは,難民の流入を阻止しようとする政府の強硬な措置によって混乱が起きた。また,シェンゲン協定圏外との国境を抱える国々では責任の押し付け合いが起こり,欧州連合が掲げる「移動の自由」の理念の課題が露わになった。
 スウェーデンはドイツと並んで難民の「最終目的地」と目される。スウェーデン政府はすべてのシリア難民に永住許可を与えるなど,人道主義的な対応をとってきた。移民に寛容な政策と豊かな経済を求めて多くの家族がスウェーデンをめざしている。
 本章では,移民に寛容な政策をとってきたスウェーデンを事例にとり,歴史的展開,制度的側面,そして実践的側面から外国人生徒に対する学習権保障の特徴を検討する。また,極右政党の台頭や名誉関係の犯罪,セグリゲーションの進展などを例に,ネイティヴのスウェーデン人と移民との関係を検討し,外国人生徒の学習権保障に向けた課題を指摘する。

書誌情報 (amazon.co.jp)
 書名: 岐路に立つ移民教育: 社会的包摂への挑戦
 出版日: 平成28(2016)年8月10日
 出版社: ナカニシヤ出版
 編者: 園山大祐

>こちらもご覧ください。
研究紹介: 外国人としての「私」と移民教育への課題意識(2019-01-13)
研究紹介: スウェーデンにおける外国人児童生徒の教育課題(2015-09-21)

2016年9月4日日曜日

研究紹介: 学校の未来を考える

林寛平「超学校社会ー"学校まみれ"の社会と学校を超える社会」, 末松裕基(編)『現代の学校を読み解く: 学校の現在地と教育の未来』(春風社, 2016)

 

 本書は、「現代の学校はどうなっているか?」「現代の学校を考える視点とは?」の2部構成・全10章により、現代の学校の特徴と実態を、課題と可能性を含めて、様々な視点・専門から描くことを試みた。全国で読み継がれる原理的な本を目指しながら、研究書や論文集にとどまるのではなくコラムや図書紹介、また現代の教育を語る上で欠かせないキーワード解説等を設けて、柔軟なアプローチのもとに読み物としてのおもしろさを追求した。

 <第5章ガイダンス>

  世界を見渡すと、5700万人の子どもたちが学校に通えずにいる。命の危険にさらされながら学校に通う子たちや、学校とは何かも知らずに人生を終える人たちもいる。一方、わが国には学校があふれている。表向きは誰でも学校に通えるようになっているものの、不登校や学級崩壊が課題となり、学校にうまく適用できずにいる子どもたちがいる。この時代には、学校が無くて通えない子たちと、学校があふれているのに通えない子たちが同居しているのだ。
 本章では、日本のように"学校まみれ"の社会がさらに極まった先にある「超学校社会」を構想する。学校が生活と一体化する「スクール・コミュニティ」、データの収集技術が発展したことによって可能になる「学習歴社会」、学校教育のコストが逓減する社会。そして学習が利益を生む社会、という四つの視点から、学校を超える社会について論じる。本論を通して、学校を望ましい社会を作る道具として活かすために、どのような可能性が残されているのかを考えてみたい。

書誌情報 (amazon.co.jp)
 書名: 現代の学校を読み解く: 学校の現在地と教育の未来
 出版日: 平成28(2016)年4月25日
 出版社: 春風社
 編者: 末松裕基

2016年9月3日土曜日

教育動向:私立大学のTA・RAは労働者

アメリカの教育動向(久原みな子)

8月23日、米国の労使関係を管理する行政機関、全国労働関係委員会(National Labor Relations Board, NLRB)は、コロンビア大学の大学院生による申し立てに対し、私立大学でリサーチ・アシスタント(RA)やティーチング・アシスタント(TA)に従事する大学院生は全国労働関係法(National Labor Relations Act)が適用されるべき労働者であると決定した。私立大学におけるRAやTAが労働者であるかどうかという点について、NLRBは、2000年、2004年につづき、再びその決定を翻したことになる。この決定により、私立大学におけるTAやRAは、労働組合を組織するなどの権利を有することになる。なお、公立大学においては、州法の管轄下にあり、すでに少数ながらTA・RAからなる労働組合を持つところがある。

TAやRAの大学院生は、自分の勉強・研究に加えて、学部の授業を行ったり成績をつけるなどの学部生の教育支援、あるいは研究を支援するなどの業務に従事し、その見返りとして学期中、授業料の免除と一定の給料の支払いを受けることができる。しかし、大学によっては、TAやRAの賃金だけでは生活できなかったり、TA・RAや、テニュアのない若手研究者などの低賃金過重労働に大学の業務の多くを頼っている場合もあり、各地の大学で労働組合を組織するための動きが出ていた。今回の決定に対し、コロンビア大学は、大学と学生の関係は主には教育的なものであり、労使関係ではないと反対の意を表明している。

2016年8月20日土曜日

教育動向:教員給与と教員不足

アメリカの教育動向(久原みな子)

経済政策分析を行っているシンクタンクEconomic Policy Institute(EPI)は、8月に発表された報告書で、教員給与が、教員を除く他の大卒労働者よりも低く、さらにその差が広まっていることを指摘した。

報告書によれば、1996年から2015年の間に全労働者の平均週給が上昇したのに対し、教員の週平均給与は逆に減少していた。また、教員の平均給与と、教員を除く大卒労働者の平均給与を比べた場合、教員給与は常に教員以外の大卒労働者の給与より低く、しかもその差が最も小さかった1990年半ば以降広がり続けている。1996年には教員平均給与は教員以外の大卒労働者の平均給与より13.1%少なかったが、2015年には22.8%、週給換算で323ドル少ないものになっていた。

教員給与の問題は、教員不足と大きく関係している。人口増加の続く米国では教員の需要増加が予測されているものの、2020年代半ばまでに多くの教員が定年を迎える予定で、高い離職率、大学の教員養成課程入学者の減少を考慮すると、近い将来教員不足がさらに問題化すると考えられいる。教員不足がすでに深刻なユタ州では、教員養成プログラム卒業者でない人や教育免許のない人でも教科内容に関する知識がある場合は教師として雇用するという代替案を採用しはじめるなど、全国的に緊急に対策を必要としている学区がある。