2016年9月18日日曜日

研究紹介: 移民生徒の学習権保障

林寛平「スウェーデンにおける外国人生徒の学習権保障」, 園山大祐(編)『岐路に立つ移民教育: 社会的包摂への挑戦』(ナカニシヤ出版, 2016) 


 2015 年夏には,ヨーロッパにおけるシリア難民の受入れ問題を通じて,我が国でも広く「人の移動」について再考を迫られた。短期的な受入れと同時に,長期的にはどのような共生社会を描くかという政治的判断も考えなくてはならないだろう。こうしたなか今日みられる排外主義,人種主義,ナショナリズムの台頭は,日本においても多文化共生政策,あるいは国際理解教育や外国人の受入れを後退させる可能性がある。人道主義に立脚し,寛容な社会とされたオランダやスウェーデンにおいても排外主義や極右の台頭は,イスラモフォビアと混同されたり,すり替えられる危険がある。そのため再度異文化間,または宗教(道徳や市民性)教育との関連について各国の政策の変遷を整理する必要があると考える。今一度,ヨーロッパ諸国間の比較研究の重要性が再確認されたのではないだろうか。
 本書を通じて,ヨーロッパの移民問題の多様性について理解を少しでも促進することができれば幸いである。またそうした西欧諸国の課題にも言及しながら,我が国の教育施策や実践のあり方について一定の示唆を提供することができればと考える。国際比較研究の意義である諸外国の事例を並置比較することから,何らかの法則やモデルを導き出すことに少しでも貢献できればと願っている。また学生や現場教員にも読みやすくなるようコラムを設け,現場の声をいれたり,付録を作成し,各章では十分に触れられなかった教育制度,教育統計,基本文献,映画情報などを掲載している。(「まえがき」より抜粋)

 <第7章ガイダンス>

  2015 年に起きた欧州難民危機では,シリア人をはじめ,中東,アフリカ,南アジアなどから多くの難民が欧州諸国に流れ込んだ。ハンガリーなどでは,難民の流入を阻止しようとする政府の強硬な措置によって混乱が起きた。また,シェンゲン協定圏外との国境を抱える国々では責任の押し付け合いが起こり,欧州連合が掲げる「移動の自由」の理念の課題が露わになった。
 スウェーデンはドイツと並んで難民の「最終目的地」と目される。スウェーデン政府はすべてのシリア難民に永住許可を与えるなど,人道主義的な対応をとってきた。移民に寛容な政策と豊かな経済を求めて多くの家族がスウェーデンをめざしている。
 本章では,移民に寛容な政策をとってきたスウェーデンを事例にとり,歴史的展開,制度的側面,そして実践的側面から外国人生徒に対する学習権保障の特徴を検討する。また,極右政党の台頭や名誉関係の犯罪,セグリゲーションの進展などを例に,ネイティヴのスウェーデン人と移民との関係を検討し,外国人生徒の学習権保障に向けた課題を指摘する。

書誌情報 (amazon.co.jp)
 書名: 岐路に立つ移民教育: 社会的包摂への挑戦
 出版日: 平成28(2016)年8月10日
 出版社: ナカニシヤ出版
 編者: 園山大祐

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