2015年6月21日日曜日

研究紹介: PISAを照らす北欧のオーロラ2009

研究紹介:

澤野由紀子ほか(監修)『【抄訳】PISAを照らす北欧のオーロラ2009―読解力を中心に』
(国立教育政策研究所, 2015) 




* 「解説: 北欧諸国はPISAをどう分析しているのか」を金沢大学学術レポジトリからご覧いただけます。(2015/09/10追記)

 2000年から3年ごとにOECD(経済協力開発機構)が実施しているPISA(生徒の学習到達度調査)では、フィンランドの好成績はもとより、北欧諸国の特徴的な結果が世界中の注目を集めている。本資料は、北欧閣僚会議が2012年に公表したPISAの分析報告書を抄訳したもので、北欧諸国の客観的な状況のみならず、当事者たちが何に関心をもち、どのように自己分析しているのかを知ることができる。

 北欧諸国は歴史的な経緯から共通項が多い。しかしながら、成績の経年変化を見ると、各国が全く違ったパターンを現している。フィンランドは毎回ずば抜けてよい結果を出していたが、2009年には顕著に点数が低下した。スウェーデンは調査ごとに成績を落とし、10年間で計19ポイントの低下が見られた。一方、ノルウェーは2000年から2006年にかけて計21ポイント低下したが、2009年には19ポイントの劇的な回復を見せた。アイスランドは上昇と下降を繰り返し、4サイクルで計7ポイント低下した。デンマークは最も安定していて、毎回若干の上下が見られるだけだった。これらの違いは何に影響されているのだろうか。もちろん、一括りに北欧と言っても、制度の細部、教育を取り巻く環境、さらに教育の文化的側面においては、各国の違いも見られる。本報告書は、この「相違点と類似点」に着目し、「分析の軸を立て、互いの結果を比較検討する」という国境を超えた取り組みであり、国際学力調査の結果の分析・活用の具体例として示唆に富んでいる。

 原著(Niels Egelund (ed.), Northern Lights on PISA 2009 –focus on reading, Nordic Council of Ministers, 2012)は9章で構成され、ジェンダー、移民の背景、社会経済的背景、読書の楽しみ、学校関連要素などの視点から各国の生徒の読解力を分析している。また、デンマークが行った追加調査(PISAエスニック2009)の結果の分析や、この間に行われた教育改革や社会状況の変化が生徒の成績に与えた影響などを分析している。本資料では、このうち、要約箇所等を除いた7章分を翻訳した。

書誌情報 (CiNii)

  書名: 【抄訳】PISAを照らす北欧のオーロラ2009―読解力を中心に―
  出版日: 平成27(2015)年3月31日
  出版所: 国立教育政策研究所
  監修・監訳: 澤野由紀子(聖心女子大学文学部 教授)
                    中田麗子(ベネッセ教育総合研究所 アセスメント研究開発室 研究員)
                    林 寛平(信州大学教育学部 助教)
                    本所 恵(金沢大学人間社会研究域学校教育系 准教授)
                    渡邊あや(国立教育政策研究所高等教育研究部 総括研究官)

※本書に関するお問合せは北欧教育研究会(hokuofc@gmail.com)まで。

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