2017年5月27日土曜日

教育動向:教育予算審議始まる



アメリカの教育動向(久原みな子)

5月22日、トランプ政権の予算案が議会に提出され、本格的に予算審議が始まった。水曜の下院歳出小委員会では、教育省の予算のおよそ13%にあたる約90億ドルの教育予算削減の提案に、野党民主党議員からデヴォス教育長官への厳しい質問が相次いだ。特に、デヴォス長官が推進する学校選択制拡大のために、低所得家庭への支援が削減されることについては、デラウロ議員が「残酷で非人道的」と批判。また、バウチャー制度により、LGBTの家族のいる生徒の入学を拒否するなどの差別的入学選抜をしている私立学校に連邦政府の資金が投入されることの是非についての質問には明確に返答することを避け、あくまで生徒の親と州の決定にゆだねることであるとの考えを述べた。

予算案は、そのほかに学資ローンの簡略化と連邦政府による利子肩代わりの削減を提案。また医療保険制度メディケイドの予算削減は、特別支援の必要な生徒や低所得家庭の生徒に大きな影響が出ると予想されている。

2017年5月12日金曜日

教育動向:デヴォス教育長官の卒業式スピーチにブーイング

アメリカの教育動向(久原みな子)

5月10日、歴史的にアフリカ系アメリカ人の教育のために創立されたいわゆる「黒人大学」(historically black colleges and universities, HBCUs)のひとつであるベスーン・クックマン大学(フロリダ州)の卒業式が行われ、来賓のデヴォス連邦教育長官がスピーチを行ったが、多くの学生がブーイングをしたり、文字どおりデヴォス長官に背を向けるなど、抗議の姿勢を見せた。

「黒人大学」は、人種差別により白人と同じ大学への入学が認められず高等教育を受ける機会が限られていたアフリカ系アメリカ人が、公民権運動以前からかれら自身で創設・運営してきた大学である(現在はアフリカ系アメリカ人以外の学生も受け入れている)。ところが、今年2月に学校選択制の推進を目指すデヴォス長官が、こうした歴史的経緯をふまえず、黒人大学は「学校選択制の先駆者である」と発言し、「黒人大学」関係者などから非難を浴びていた。一方、トランプ大統領は2月に「黒人大学」の学長らをホワイト・ハウスに招くなどして、トランプ政権の「黒人大学」支援をアピールしていた。しかし、先週末から今週にかけて「黒人大学」に対する財政支援が違憲になりうるという見解を示し非難が殺到したため、改めて「黒人大学」を変わらずに支援することを表明するなど、トンプ政権と「黒人大学」の緊張関係が続いていた。

ベスーン・クックマン大学でのスピーチに関しては、デヴォス長官を卒業式に招かないよう求める約6万人の署名が大学に届けられていた。また、フロリダ州の全米黒人地位向上協会/NAACP(公民権団体)は、デヴォスを招待したジャクソン学長の辞任を求めている。

2017年3月18日土曜日

教育動向:トランプ政権が予算案を発表、教育予算をカット



アメリカの教育動向(久原みな子)

トランプ政権は3月16日、「アメリカ・ファースト」と題した2018年度連邦予算案を発表。大幅な軍事費増加を提案するとともに、教育省予算は今年度のおよそ13.5%減(約90億ドル減)となった。教師教育、始業前および放課後の活動支援、低所得者向けの奨学金プログラムなどへの財政支援が削減あるいは廃止される一方で、学校選択制を拡充させるためのプログラムに約14億ドルが追加された。これにより、チャーター・スクールや私学進学に使用できる教育バウチャーへの支援が強化される見込みである。

また、同予算案は、様々な芸術活動とその普及・教育に対して全米最大の資金提供をしている全米芸術基金(the National Endowment for the Art, NEA)と、図書館、博物館などの各種文化施設や大学、公共テレビ・ラジオ放送局、人文科学系研究者などに幅広い財政支援をしている全米人文科学基金(the National Endowment for the Humanities, NEH)の撤廃も提案している。