2022年4月22日金曜日

スウェーデンでドローンを飛ばすには

スウェーデンでは、2021年1月から新しい法律ができ、EUのドローン規制との整合するようになりました。以下では、日本からドローン(DJI Air 2S)を持っていき、現地で飛行・撮影し、SNS等に掲載するまでの道のりを紹介します。なお、情報は記事執筆時点のものですので、最新の規制等は各自でご確認ください。



1. 日本からドローンを持っていく

2022年4月に、ドーハ経由のカタール航空便でストックホルムへ向かいました。事前にカタール航空のホームページを調べると、ドローン本体とリチウムイオン電池のそれぞれに持ち込み規制がありました。そのため、成田のチェックインカウンターでドローンを持っていきたいことを申告すると、地上係員が付き添って出発フロアの一番端にある手荷物検査場(成田空港第2ターミナル3階の地図の左下、7のあたり)に案内されました。

手荷物検査場では、ドローン本体はスキャンのみで通り、バッテリーについては一度カバンから出して、容量を確認していました。カタール航空では100wHより大きいリチウムイオン電池は持ち込めないことになっていますが、DJI Air 2Sは40.42wH(写真の黄色マーカー部分)のため、その表示が確認できれば預けられます。機内に持ち込むと乗り継ぎでも面倒になるので、預け荷物に入れました(カタール航空のウェブサイトには「本体は機内持ち込み」と書いてありましたが、預けられました)。
追記(2022/04/24): 復路便では機内持ち込みのみ可(預け荷物は不可)ということで、預け荷物から取り出されました。


2. オペレーター登録

ドローンの機体登録や免許はTransportstyrelsen(交通局)が管理しています。そこで、まずは交通局のホームページから「ドローンページ」にログインします。(BankID等がないと入れません)

次に、オペレーター(operatör)として登録します。18歳以上が登録でき、登録料は50SEKです。
オペレーター登録が済むと、メールあてに即座に通知書が届きます。また、「ドローンページ」にもオペレーターIDが表示されます。

3. オペレーターIDを本体に貼る

オペレーターIDは自分で適当な紙に印刷して、ドローン本体にテープ等で貼りつけます(センサー類に支障がないように、脇腹などに)。

なお、2022年12月までは経過措置として上記方法で対応できますが、2023年以降はCEマークとCマークの認証を受け、リモートID機能がついた機体のみ飛行できます。2022年までに登録された機体は引き続き飛行できます。

4. ドローンカード(免許)の取得

15歳以上の人はドローンパイロット(fjärrpilot)になれます。ドローンパイロットには以下の3種類があります。
  • オープン(Öppen): 高度120m、ドローン重量25kgまで。航空機や人、動物や環境などに危害を与えるリスクが少ない場合
  • スペシフィック(Specifik): オープンに加え、リスクのある飛行をする場合
  • サーティファイド(Certiferad): 人を輸送したり、群衆の上空を飛行するなど、高いリスクがある場合
オープンにはサブカテゴリーがあり、A1/A3とA2という2つの種別があります。いずれもスウェーデンで取得すると、EU全域で飛ばせるようになります。免許種別は機体の重さや速さによって異なります。A1/A3については天気や物資の輸送などに関する一部の学習内容が省略されているため、飛行できる条件に制限があります。A2は少しだけ学習内容が追加されますが、A1/A3とA2をまとめて取得するほうがいいと思います。いずれも130SEKかかります。A1/A3は座学のみでオンライン試験を受け、40問のうち75%以上が正解なら即座にカードが発行されます。また、A2を追加で取得する場合、座学についてはオンライン試験で、30問のうち75%以上の正解が必要です。また、実技も求められますが、これはPDFのチェックリストをダウンロードして、操縦をしたことを自己申告します。オンライン試験(座学)に受かった直後に自己申告してもカードが発給されました。

ドローンカードの期限は発給から5年後の月末となっていて、A1/A3からA2にアップグレードした場合には、A1/A3についても、A2の試験の合格日を基準にこの期間が延長されます。


スペシフィックには能力証明書(kompetensintyg)、サーティファイドには操縦者証(fjärrpilotcertifikat)がそれぞれ別にあります。
自分がどのカテゴリー・サブカテゴリーか不明な場合には、ドローンガイドで調べることができます。

5. ドローンパイロット用のベストを買う

ドローンを飛ばすときには、ドローンカードを携帯し、ベストを着る必要があります。そのため、インターネットで買いました


6. ドローンを飛ばす

ドローンを飛ばす前に、少なくとも以下の4点を確認する必要があります。   

    ①Luftfartsverket(航空局; LFV)のドローンマップ
        空港や軍事施設周辺など、ドローン規制に関する情報を集めた地図
    NOTAM, AIP, AIP SUP 
        航空関係施設、業務、方式と危険等に係わる設定や状態、変更等についての情報
    自然保護マップ
        自然保護地区などを示した地図
    ④飛行予定地に「撮影禁止」と表示された場所がないかを確認(徒歩で見て回る)

①のドローンマップで制限がかかっている場合、制限の内容を読んで飛ばせるかどうかを確認します。空港の周囲5km圏は特別な許可がない限り飛ばせません。また、空港の周辺20km圏については、軽い機体であれば高度10mまでは特別な許可なしに飛ばすことができますが、そういった情報が載っています。

②NOTAMに記載事項がある場合には、飛ばせません。

③自然保護マップに乗っている地区の場合、上空を飛ばすのは難しいので、それ以外の場所から飛ばすようにします。

④飛行予定地内に、私有地などで「撮影禁止」と表示されている場合には、撮影することはできません。


7. 撮った映像をインターネットに載せる

ドローン映像は安易にインターネットに掲載することはできません。違法にアップロードした場合、罰金刑あるいは1年以下の懲役刑の対象となります。

次の条件を満たす場合には、特別な許可なくSNS等にアップロードできます。
    ①6. の飛行条件を満たしている
    ②私有地あるいは公共の場所で撮影の許可があり、それ以外のものが映り込んでいない
    ③地平線より上(つまり、空)が入っていない
    ④水辺が映り込んでいない
    ⑤森などで、上空から俯瞰したものでないもの(全体像が分からないもの)

上記以外の場合、
    ・陸上の風景にについてはLantmäteriet(国土測量庁)に頒布許可(spridningstillstånd)申請をします。
        こちらはウェブフォームで申請し、ビデオファイル等を送信します。
        BankID等がなくても、海外在住でも申請できます。
        早ければ5営業日程度でメールあてに許可通知が届きます。


    ・水辺が映っている場合には、Sjöfartsverket(海運局)に頒布許可を申請します。
        こちらはウェブフォームがないので、メールで申請します。

また、許可なく飛行・撮影あるいは頒布したことにより罰金を科された例として、2015年6月にウプサラ在住の操縦者がヘッレフォシュ(Hällefors)周辺の野鳥保護区で撮影し、33000クローナを科された事例や、頒布許可を取らずにYouTubeに掲載したとして64000クローナを科された事例、2023年にイベント上空で撮影し35000クローナを科された事例などがあります。自然保護区や国防上の理由で地理情報を保護する必要がある場所、イベント上空などを飛行し、その映像を公開する際には、大きなトラブルに発展する可能性がありますので、必要な許可を取るようにしましょう。

信州大学ドローンクラブ(SDC)は、信州大学教育学部の教職員・学生・院生を中心に活動し、教職大学院科目「教育課題教材開発演習」等を通じてドローンの教育活用に取り組んでいます。