学生たちはこれまでに総務省のフューチャースクール推進事業や海外のMOOCs事業、ゲーミフィケーションの教育活用やビッグデータの概念について学んできました。
ことICTに関しては、先生よりも子どもの方が先を行っていることが多くあります。教育学部の学生たちは、自分たちが近い将来教壇に立った時に、自分の知らない世界や子どもの才能にどう向き合えるのか、そんな課題意識を抱きながら、まずはこの世界に触れてみよう、ということで、90分×15回を使って、グループごとに教育アプリの開発に取り組んでいます。また、ドローンやプログラミングロボットを活用した教育実践の開発にも挑戦しています。
今回の議論は、NHKで報道された以下のニュースがきっかけになりました。
NHK 「デジタル教科書」導入の検討始まる (2015/05/12)
デジタル教科書の設計については、規格の統一、マルチデバイスへの対応、クラウドの設計、膨大なトラフィックの処理などの技術面での課題に加えて、教育実践の場でどう活用できるのかという大きな課題が残されています。
しかし、これから教員になろうとする学生が課題ばかり考えていても仕方がないので、今回は特に「可能性」について考えてもらいました。「デジタル教科書にこんな機能があったらいいな」というアイデアを集めました。(一部表現を改変しています)
教え方、学び方
ブレンディッドラーニング、反転授業への活用- 生徒が家にいながら、まるで教室にいるかのように授業を受けられる。今その例としてまさに信州大学ではe-learningの動画授業が導入されている。自分が好きな時間、隙間時間にできるし、分からないところを何度も見直せる。(津田 哲志)
- 授業は家庭で取り組み、学校を復習や議論の場にすることができ、学びを深められる。(小口 真奈)
- 不登校の児童はデジタル教科書を使えば同じ時間に異なる場所(家、保健室)で授業を受けることができて、クラスメイトと意見を共有できる。学校に通えない生徒も自宅で映像で授業が受けられる。(有馬 衿花)
- タブレットを予習復習に使う際、勉強に少しゲーム感覚を取り入れる。問題をといた蓄積を確認することができ、また間違えた問題をすぐに確認できる。今まで紙媒体だと捨ててしまう自分の学びを残せる。(大橋 光貴)
- どこまで宿題が終わったかカラーのグラフやスタンプラリーなどで表す。掛け算の九九など、継続して取り組み続けるものは、ここまで終わったと表す。今何人の生徒が勉強しているか表示する。そうすることによって生徒が競い合って学ぶことができる。(木暮 美咲)
- 文化祭や学年等の学校行事でレクリエーションを行う際、GPS機能をつけることでIngressのようなゲームも行うことが可能だ。学年を超えた連携が生まれる。(小口 真奈)
学習データの活用
ビッグデータの活用- 授業中や宿題でタブレット内で出題されて間違えた問題とそれに類似した問題、発展的な問題を2日や3日ごとなど一定のペースで出来るその子だけのドリルを作成。細かな解説や躓いた箇所の確認・解説がされる。さらに間違えた問題はどこで間違えたのかが記録され、教師にそのデータが集約できるようにする。(井上 楓)
- 上記のその子だけのドリルなどで集約されたデータをもとに全国の同じ教師同士で意見交換が出来る。クラスや学年ごとに苦手な単元などを正答率などの数値で明らかにして、解決方法や同じ苦手な単元で悩んでる者との意見交換が出来るような設定。(井上 楓)
- 問題を解いた時点で間違っている部分を指摘してくれたりヒントを与えてくれたりする。授業中だけでなく宿題を事前に添削することで、授業前に自分が苦手なところが明確になり学ぼうとする意欲があがる。教師も子どもたちがどんなところでつまずきやすいかが分かり授業作りがしやすくなる。(永井 華)
- 自分の勉強の進度や成果を蓄積すれば、それに合わせた 、一人一人にあった学習プログラムを作ることができる。上記の添削機能と連携させれば、苦手な問題を集めたプリントやワークが作れるようになり苦手克服やテスト対策にも活用できる。また、学習記録があれば成績をテストだけの結果で判断せずにそれまでの過程を含めて成績をつけることができる。これは、子どもと教師だけでなく保護者も見ることができるようにすればテストだけでは見えづらい子どもの成長を確認することができる。(永井 華)
- 自分がデジタル教材を使って学んできたことを蓄積していって個人個人にあった進度の学習ができるようにする。(小澤 亜美)
- 間違えた問題がある場合、同じ問題・類似した問題などその生徒にとって必要な問題が出るようにする。データを蓄積し、不得意な分野をグラフ化し、対策に役立てていく。また、生徒にとってもデータを可視化できるようにすることはモチベーションにつながると思う。(小口 真奈)
- 教科書は全国すべて同じものだが、子どもたちの住む地域によって教科書に記されている内容とは変わってくるところもある。例えば、社会の授業で農業を学ぶとする。都会の子どもたちにとっては、教科書に記されているカモを使った稲作などは実際に行われていない。教科書とギャップがあるのが現実だ。自分たちが学ぶ教科書を自分たちの手で創ることで、知識をより身近に感じることができる。(永井 華)
- 自分専用の教科書に: 従来の紙ベースの教科書では、算数や漢字のドリルなどは教科書に載っているものしか、解くことは出来なかった。しかし、デジタル教科書では、子どもたちひとりひとりに合わせ、進行度、難易度などを自動で変化させることができる。子ども達には必ず個人差が生じる。今までの学習が早い子もそうでない子も同じ問題を解いていた時代は終わり、自分にあった教科書を用いて学習することができる。(川久保 春輝)
- 教科書の練習問題を解くと採点システムをつかって自動採点してくれる。間違えやすい問題を中心に、自分だけのオリジナル問題集を作ってくれる。(田内 優貴子)
- 問題を解いていく中で、この児童・生徒はどの過程でどのような間違え方をしたのかを記録して、その間違えに対応した解説を載せ、一人一人に対応した教科書、問題集ができる。(仲田 美幸)
- 教科書は勉強についてのみ書くのではなく、個人の進歩状況や学習達成度についても記録・管理することによって生徒のモチベーションを保つ。そして、この学習管理は教師だけでなく保護者にも定期的にメールされるようにすることによって生徒の状況を知ってもらうことがより簡単にできると考える。(木暮 美咲)
- 日付ごと、教科ごとの宿題がリスト化されており、終わったものにチェックを入れられる機能。何が宿題で出されていたか忘れてしまった時に、見返せる。また、教師側からもそのリストを一人一人確認することが出来、誰が宿題をやっていないか一目瞭然になる。(髙野 聖衣愛)
- 板書をそのまま保存し、さらに見やすく自動で整理してくれる機能: 暗記物は実際に手で書くことも大切だが、ノートを取ることに必死になって先生の話をしっかり聞けないということも多い。板書をそのまま保存することが出来、あとでテスト前などに見直せる。また、板書がゴチャゴチャしていたり、きれいな字で書かれていなかったりする場合は、自動でまとめ直してくれる。(髙野 聖衣愛)
- 一人ひとりがどのように教材を活用したか、授業に積極的に関わってきたかという観点を成績評価(関心・意欲・態度)に加えられる。(有馬 衿花)
教科書の新しい機能
GPSの活用- GPSを使った学習: 校外学習などをする際、グループにひとつタブレットがあればグループごとに行動させても先生はGPSで生徒の動きを把握できるため、安全を確保できるし行動範囲も広がる。(駒井 花子)
- GPS機能を使って子どもの安全を守りつつ、校外の活動を充実させられる。子どもが撮影した写真・動画が自動で転送される機能があれば、教室外に出る時に先生がこの子がここでどんな行動をしているということが把握できる。一人一人が自分のしたいこと、行きたい場所にあわせて活動できる。何か危ない行動があるときや、そろそろ学校に戻ってきてほしいときなどは、教師がメッセージを送れる。子どもから教師、子どもから子どものやり取りもできる。今までは、子どもの安全のために校外に出たとしても、行動範囲が教師の目が行き届くところに限定されたり、集団で行動しなければならなかったりしたが、その枠組みを超えられる。子ども一人一人が主体的に行動し、異なった経験ができる。(小林 花梨音)
中継
- 他校と中継を繋いで賛成側の学校、反対側の学校に分けて題材を決め討論を行う。(森 晴菜)
- 生徒一人につき教育学部の大学生と中継を繋ぎ、個別指導の形態にする。(森 晴菜)
- 外国と中継を繋いで外国人と交流する(森 晴菜)
- 3Dプリンタを使って地域の勉強に役立てる。航空写真などで学校周辺の3Dマップを作成。また、GPS機能を使い、子どもたちが授業で地域の探索をしたそのルートと、探索で見つけた建物やお店などを撮った写真を、3Dプリンタでその部分に色を付けた3Dマップの作成。(井上 楓)
- 図書館に蔵書されている本をデータ化し、デジタル教科書からアクセスすることで、電子書籍が楽しめ、調べ物などにも役立つ。SNSを活用して、本の感想を共有したり、お薦め本の紹介する機能やアプリを作る。また、本の保存や延滞、紛失などに対する対策にもなる。(小口 真奈)
- 現在では、メガネをかけるだけで、仮想空間に映像を写すこともできる。これを用いて、運動の出来ない子にもドッジボールを、脳とリンクさせることで、目が見えない子どもにも映像を見せることが可能かもしれない。(川久保 春輝)
- 今までは模造紙に印刷した写真などを貼り、マジックで書いて作っていたが、タブレット型のデジタル教科書ならば持ち運び可能なので、外で写真を撮って、そのデータをタブレットでまとめて発表することができる。(久保田 朱音)
宿題
- 宿題をインターネット上に提出すると、その場で添削してもらえる。(仲田 美幸)
ノート
- 教科書に書き込めるスペースがあり、それをノートとして活用する。ただノートを書き写すだけでなく、教科書と対応させながら学べる。(田内 優貴子)
- ○×だけで終わらなくなる。まず、問題を解いた後の答え合わせが早くできる。間違えた部分の解説を容易にできる。また自分の解答の間違えの水準をデータで詳しく見ることが簡単になる。(小澤 亜美)
- 黒板などで説明中、モニターにその説明についての生徒が不思議に思ったこと、分からない点などの意見が投稿され、クラス全体でその意見を共有する。(Twitterのようなイメージ)文を投稿しなくてもデジタル教科書に「?」ボタンや「!」ボタンなどを設定し、分からない時点、理解した時点でボタンを押すことで、その場でどのくらい理解できた子がいてどの子が分からないままなのかをモニター(または教師のタブレットやPC)などで可視化する。(井上 楓)
- 先生は質問が多いところから答えるとともに、児童生徒の理解していない部分が今までより容易に分かる。家庭学習の時に、先生と一対一のチャットや、先生を含めたクラス全体のチャット、個人のチャットなどができると、分からない問題も解ける機会も増える。チャットでみんなの分からなかったところのまとめを一日に一回提示することも良いだろう。(久保田 朱音)
- 生徒が書いたものをそのままみんなに見せて、それを使って説明してもらうことができる。説明することでより深い理解が図れるとともに、共通理解が図れる。誰でも自分の意見が言え、先生と生徒の意識疎通がしやすい。自宅学習と学校学習も結びつけが簡単になるだろう。(津田 哲志)
- 黒板やホームルームで書いたようなお知らせをデジタル教科書に送信し、確実な連絡を行う。保護者への通知もデジタル教科書を通して送信する。(小口 真奈)
各教科の学習
国語- 漢字の書き順確認システム(田内 優貴子)
- 教科書の中で先生がここ!というデータを送信すると、その場所が示されすぐにわかる。特に国語の授業でページや段落を言わなくてもいいのでわかりやすい。(田内 優貴子)
- 学校周辺の地形を模型にする。写真とともに、どんな街なのかを調べる「街探検」がリアルになる。(田中 晴子)
- 関連する項目のデータの最新情報を知ることができる。毎回更新していけばそれが教材になる。その日のニュースも教科書に載せることができる。(田中 晴子)
- 図形を回転させたり、体育の動画を見たり出来る。算数は図形を回転させて正面からは見えない部分を見ることによって理解しやすくなる。展開図が苦手な子が多いので活用すれば納得がいくと思う。(髙野 聖衣愛)
- 様々な図形を様々な方向から見ることができ、立方体の切り口の問題だったら、実際に立方体を切ってみてその切り口が実際どうなっているのかを確認できる動画機能があるデジタル教科書があれば良いと思う。また、3Dプリンターとリンクさせて実際に立体図形を手に取ってみる機能も、子どもたちの空間認識力を養う上で効果的だと思う。(匿名希望)
- 石灰水の画面を用意して息をふきかけると白くなるなど。植物の発芽条件などでは複数の条件をカスタマイズして、結果をみて正しいか調べる。(大橋 光貴)
- 生物のイモリの原基分布図の把握のために使う。3Dプリンタを使い、そこからどのように成長していくかの過程をそれぞれ作る。切って断面を把握することも可能。(田中 晴子)
- 桜の開花時期、降雪、気温を各地域で写真付きデータを更新。生徒同士で四季を実感できる。(田中 晴子)
- 学校ごとに違う動物を飼う。それぞれの飼育状況を共有することによって、自分の学校ではできないことも画面上で知ることができる。(田中 晴子)
- 身の回りに咲いている植物を調べるとき、グループにわかれて校区などを歩き回り、見つけた植物を写真におさめる。GPSの機能で写真をとった場所も同時に保存される。教室に帰り、グループごとに地図にみつけた場所と植物をおとしこんでいけば、他のグループと比べてみることもできるし、植物の多く見られる場所の特徴を考えたり、植物それぞれの特徴を考えたりすることもできる。(駒井 花子)
- 動画の導入: 理科の実験方法、家庭科の調理実習や裁縫をいつでも確認できる状態であることで文字では理解できない内容をしっかり確認できる。安全面も向上。(大橋 光貴)
音楽
- ICTを用いて数種類の楽器からなる楽曲を作曲する。音程のチェックや音のバランス、調整が容易であることに加え、作曲した曲を自動的に楽譜化し、実際に演奏してみることもできる。(宮島 彩季)
- 教科書に載っている外国の伝統的な楽器を組み合わせて作曲してみる。(中国と日本、韓国の伝統楽器の音色を組み合わせたらどんな雰囲気の曲になるのか)(宮島 彩季)
- 楽譜を再生できる機能を持った教科書があれば良いと思う。音楽は感覚で身につく部分もあると思うので、「ここのリズムが分からないな」と感じたら、すぐに再生できれば、疑問をその場で解決できると思う。また、自分で楽譜を作成できる機能もあれば、音楽の楽しさに触れることができると思う。(匿名希望)
- 教科書に音も録音されていて放課後や家でも練習ができる(田内 優貴子)
- 学校同士での作品の共有。一つの題材でも、学校外の人のいろいろな作品を見ることができる。(田中 晴子)
- 3Dプリンタとの連携によって、より自由で個性的な美術活動が行えたり、アニメーションや映画製作など今まで関わったことがないような活動ができる。(小口 真奈)
- 体育で客観的に自分を振り返る: 教科書に「実際にやってみよう」という空欄を設け、自分の実際に取り組んでいる姿を動画で撮り貼り付けられるようにする。そして、後でスローモーションで見たり、模範の映像と比較したりすることによって、分析・改善する。 教師もその映像を評価の参考にできる。体育の授業は自分の技量についてチェックしたり評価することは難しいが、デジタル教科書を用いることによって よりPDCAサイクルにそった授業を展開することができる。(木暮 美咲)
- 体育はコマ送りの写真を見るだけではイメージがつかめないことも多いので一つ一つの技を動画ですぐに確認できる(髙野 聖衣愛)
- 家庭科や音楽、体育などの実技系の教科書に載っている図を動画にすることによって、裁縫や調理方法、楽器の演奏方法などがイメージしやすくなる。(仲田 美幸)
- 英語圏に住む人たちと中継を結び、会話を楽しむ。生徒一人一人にネイティブスピーカーが一人一人つくようなイメージで、教科書に沿った内容を一緒にやったり、時には日本語を学んでいる英語圏の人々と中継を結んで、英語を教えてもらう代わりに日本語を教えるのも面白いかもしれない。(宮島 彩季)
- 外国人と遠隔授業をすることで実生活に活かせる英語を学ぶ。(永井 華)
その他
荷物が減る
- ランドセルいっぱいに詰め込み、体に合わない重さとなっているランドセルが軽くなる。子どもの体にかかる負担もかなり小さくなる。学校に来るのがより楽になる。(津田 哲志)
- デジタル教材というだけで、生徒の意識は高くなるもので、主体的な学習態度を望める。(津田 哲志)
- 動く画像でやる気UP: 従来の授業では、算数の立体図形、社会の工場の様子、体育のスポーツのルールなどは実際に作ったり、体験するしかなかった。しかし、これもデジタル教科書を用いることで、立体図形はCGでより立体的に多面的に見れ、社会見学に行かずとも工場の内部の様子は理解でき、体育のスポーツのルールは頭に入れた状態で授業を開始できる。(川久保 春輝)
- 社会では地理などはとても立体的に見ることもできるためわかりやすくなるだろうし、歴史の人物が動いてくたら児童のやる気は倍増。(長谷川達也)