2019年11月23日土曜日

研修報告: 海外学校臨床実習2019 6日目

11月21日

ウプサラ組の4人は、今日から教室に入って授業を見学しました。特別支援学級の見学だったのですが、特別支援教育に携わる方や大学で専門としている人ばかりで4人ともいつもよりウキウキしていました!

教室に入って最初は日本の教育と似ているという印象でした。生徒一人一人の発達段階に合わせて授業を展開しており、全体より個を見るという部分では日本の特別支援教育と同じだと感じました。ただ、参観してみると、教師の関わり方に日本との違いを感じました。日本では、準備から後片付けまで生徒がすべて行い、教師が補助をするという形式が一般的です。しかし、今回の学校では準備、後片付けなどを教師が行っている様子がよくみられました。また、教科学習でも生徒が意欲的でないことを無理やり進めることも見られませんでした。少し手をかけすぎなのではと感じることもありましたが、その子の得意なことを伸ばすというスウェーデンの教育スタイルを考えると納得な気がするし、面白いと感じました。
帰りは、ウプサラの街を観光しました。毎日朝どのグループよりも早く出るのがとてもつらいのですが、その辛さがどうでもよくなるくらい綺麗な街並みを見ることができました。教会やお城など重厚な雰囲気で、ナッカとはまた違ったスウェーデンを感じることができました。
(山岸千紘)

我が家は、一家全員(妻と小5の息子、小3の娘)で本プログラムに参加しています。 

そして、子どもたちはSamskolaの各学級で現地の子どもたちと一緒に授業を受けさせてもらっています(我が家では「プチ留学」とよんでいます)。
子どもたちはSamskolaでの学校生活が楽しいようで、ホテルに戻ると笑顔で、「今日は8人くらい友達ができたよ」「今日は劇を見たよ」「ランチの時間が日本より早いんだよ」「掛け算の筆算の仕方が日本とは違ったよ」と、出来事を報告してくれます。「言葉が難しい」と言ってはいましたが、それを上回るくらい素晴らしい出会いや活動に恵まれた日々を過ごしているようです。

小学生段階で「海外の学校に通う」という貴重な経験ができるのも、本プログラムの素晴らしさだと思いました。子どもたちには、Samskolaで経験したことを、自分の学校の先生や友達に伝えてほしいなと思っています。


家族揃って初の海外でしたが、先生方や学生のみなさんが、我が家の子どもたちのことを気に掛けて、声を掛けてくれたり、一緒に遊んだりしてくださるので、子どもたちも私たちも安心して海外での生活を過ごすことができています。本プログラムの素晴らしさの一つと感じています。

(戸谷家一同)

※本事業は、信州大学教職大学院の授業「海外学校臨床実習」(隔年・2単位)として、信州大学知の森基金を活用したグローバル人材育成のための短期学生海外派遣プログラムの助成を受けて実施されています。

2019年11月22日金曜日

研修報告: 海外学校臨床実習2019 5日目

11月20日

今日は1時間近くかけてウプサラにあるTunabergsskolans grundsärskolaUppsala Gymnasiesärskola Fyrisを訪問してきました。

この2校は普通学校だけではなく特別支援学校としての機能も果たしており、とても落ち着いた雰囲気を持っていました。 


校長先生からお話を伺う機会がありましたが、福祉の国と呼ばれるスウェーデンでも特別支援教育に対する課題が日本と類似している点も多く、改めてその課題の難しさを知る機会となりました。

また文化や価値観の違いから生まれるスタイルも見学中に多く見られ、とても学ぶことの多い訪問となりました。

明日からはクラスに入り、授業を見学させて頂くことができます!
より近い目線で沢山のことを学んでいきたいと思います。
(新津雪乃、北翔平)

※本事業は、信州大学教職大学院の授業「海外学校臨床実習」(隔年・2単位)として、信州大学知の森基金を活用したグローバル人材育成のための短期学生海外派遣プログラムの助成を受けて実施されています。

2019年11月20日水曜日

研修報告: 海外学校臨床実習2019 4日目

11月19日

今日は2校目の学校、Boo Gårds Skola & Förskolaを訪問しました。

学校の概要を聞いた後、子どもたちが学校の外を案内してくれました。そこには整備されたとても広い芝生の校庭に、森の中に続く遊び場など、子どもたちが思いっきり遊べるような場所が広がっていました。
その後、学校の中に入り校舎の中を案内していただきました。授業を見てみると運動をしながら勉強をする姿、ソファに座りながらパソコンに向かう姿など、日本では考えられないような姿も個性として認め、教室の中に様々な生徒の姿があることが印象的でした。


その後はpreschoolに移動し、学校の中を見学させていただきました。学校では私達の訪問の前に日本について学習していたようで、「こんにちは」と声をかけてくれる子がいたり、子どもたちが書いた日本の国旗が飾ってあったり、私達の訪問を楽しみにしてくれていたことを感じることができ、とても嬉しかったです。

ここでは子どもたちのやりたいことによって環境を構成することを大切にしており、すべての部屋が何かができる場所になっていました。ここで今日のお昼ごはんもいただきました。ランチにはタイ料理を用意していただき、お腹いっぱいにいただきました。昨日のスウェーデンの伝統的な料理とはまた違い、とてもおいしくいただきことができました。
(島崎夢実)



一旦ホテルに戻った後にLaserdome Stockholmに集合しました。Laserdome Stockholmでは、チームビルディング研修として、レーザーゲームを行いました。

レーザーゲームとは、赤・青・緑の3チームに分かれてレーザーを撃ち合うゲームです。レーザーを相手の背中、肩、武器などに当てるとポイントが加算されていくルールとなっています。得点を多くとったチームが勝ちとなります。スウェーデンの大学生も3名一緒に参加してくれました。

やり始めるすぐにルールが分かってきました。会場は、迷路のように細かく入り組んでいます。自分の身をうまく隠しながら、相手からいかに得点を取るかがポイントです。また、ゲームをやっていく中で、グループごとの作戦やチームワークも大切であることに気づかされました。全部で3試合行いました。とても盛り上がり、皆さん汗だくになりました。機会があればもう一度やってみたいです。気持ちをリフレッシュできました。
(宮澤聡)



※本事業は、信州大学教職大学院の授業「海外学校臨床実習」(隔年・2単位)として、信州大学知の森基金を活用したグローバル人材育成のための短期学生海外派遣プログラムの助成を受けて実施されています。

研修報告: 海外学校臨床実習2019 3日目

11月18日

いよいよ学校訪問です!
Saltsjöbadens Samskola基礎学校を訪問しました。


先生方から学校の説明と研究実践についてのお話を聞きました。教科を学ぶだけではなく、学び方を学ぶことを意識されていました。
研究発表では、日本の問題解決型学習を用い、算数の学習で成果を上げているとのことでした。

その後、Samskolaの生徒が流暢な英語で校内を案内してくれました。
昼食は、案内してくれた生徒と一緒に学校生活について話しながらいただきました!

夜は、カラオケナイトでした。
スウェーデンの伝統的な料理を沢山用意していただきました。トナカイの肉やサーモンなど、どれもとても美味しかったです!現地の先生方との会話も弾みました!
(蔵谷京子、林あかり)


※本事業は、信州大学教職大学院の授業「海外学校臨床実習」(隔年・2単位)として、信州大学知の森基金を活用したグローバル人材育成のための短期学生海外派遣プログラムの助成を受けて実施されています。

2019年11月18日月曜日

研修報告: 海外学校臨床実習2019 2日目

11月17日

今日は早朝からHeathrow空港に行き、朝ごはんを食べたりお土産を買ったりしました。観光時間としてはたった数時間のみの滞在でしたが、皆さんもう二度と来れないかもしれないイギリスのお土産を沢山購入しているようでした。もう少しイギリスに滞在したか
ったな〜と惜しみながらも、今回の目的地の一つ目スウェーデンに着きました!極寒を覚悟してきたので、今日は思ったほど寒くなくてビックリしました。(長野県で寒さに慣れていたからですかね…?)

ホテルへチェックインした後は自由行動へ。スーパーで買い物をしたり、ごはんを食べたりしました。極夜手前のため、あたりが暗い中16時に食べたあのご飯はランチなのかディナーなのか…時間感覚が更に分からなくなりました。
fiskgryta(フィスクソッパ)というタラとサーモンを使ったサフラン風味のスープがとても美味しかったです。スウェーデン滞在中にもう一回は食べたいです!
(長坂育美)


2日目はロンドンから移動し、いよいよストックホルムに向かいます。
空港ではゲートまで遠かった!それでも無事出発できてホッとしました。

ストックホルムには、現地時間の昼過ぎに到着。本日の日の入は15:09だそうで、夕方のような雰囲気と時差で、体内時計はめちゃくちゃです。


昼食(気分的には夕食)は、近くのデリでいただきました。スウェーデンでの乾杯は「Skål!(スコール!)」と言うそうです。


帰りに寄ったスーパーでは、生活の様子も感じることができました。
明日からはいよいよ学校に行けます!
出会いを楽しみに、今日はゆっくり休んで明日に備えます。
(松本奈月)



研修2日目。
朝早くホテルを出て、いよいよ今日はスウェーデンです!
空港ではハリーポッターグッズも売っており、魔法省への入口である公衆電話で写真を撮ることもできました。 
約2時間半のフライトを経て到着! ホテルの近くのショッピングモールでは少しずつクリスマスの訪れが近づいていることを感じられました。Urban Deliというお店でおすすめのメニューをシェア。デザートのHot Chocolateは温めてとろけたフォンダンショコラにキャラメルソースとアイスを合わせたような食感。口に入れた瞬間香りが広がり、とても幸せな気分になりました。

スウェーデンの伝統的な食事、1週間の滞在でたくさん味わいたいと思います!
(田中優希)

※本事業は、信州大学教職大学院の授業「海外学校臨床実習」(隔年・2単位)として、信州大学知の森基金を活用したグローバル人材育成のための短期学生海外派遣プログラムの助成を受けて実施されています。

研修報告: 海外学校臨床実習2019 1日目

11月16日

海外研修初日、12時間のフライトを終えロンドンへ到着。いよいよ旅のスタートです!

この日はトランジットで1泊滞在のため、各自自由行動でロンドン市内を観光しました。 
私はまず最初に、憧れのシャーロック・ホームズに会いにBaker Streetへ。駅に降りるとすぐに見えるホームズのシルエットや壁画にシャーロキアンの心が踊ります。
そして地上に出ると目の前にホームズ像が。感動です。ホームズが見る先にはどんな謎が隠されているのか、気になります。今度訪れる時はホームズ全60編を原作で読み、Baker Street 221Bまで会いに来たいと思います。
次に降り立ったのはPiccadilly Circus。クリスマスの飾り付けが多くされ、いつも以上に賑わっていました。Fortnum&Masonという王室御用達の老舗の紅茶やさんでお買い物をし、ロンドン市内観光の最後に、伝統的な英国の料理フィッシュアンドチップスを頂きました。魚がふわふわで、本場の味はとても美味しかったです。

短い時間でしたがロンドンを満喫できました。明日にはスウェーデンへ移動し、これからも楽しみなことがいっぱいです。たくさんの経験を皆さんにお届け出来たらと思います。明日もお楽しみに!
(田中優希)

いよいよ欧州教育視察が始まりました! 羽田空港から離陸し、トランジットのため今日はイギリスに宿泊です。約13時間のフライトは心身ともに疲れました。11時半に出国して、15時半に到着。…早速時間感覚が分からなくなりました。

自由行動では、私はロンドンの演劇とエンターテインメントの中心地、コヴェントガーデンまで地下鉄に乗り『SCHOOL OF ROCK』のミュージカルを鑑賞してきました!英語の台詞は分からないことが沢山ありましたが、映画の世界観そのものが味わえる素敵な公演でした。本場のミュージカルを生で観ることができて、子ども達の頑張っている姿に感動しました。 

ロンドンの街並はクリスマス一色でキラキラしていました。Pret a Mangerで美味しいサンドウィッチを食べ、イギリスで過ごす楽しい1日目おしまいです!
(長坂育美)



今日から、楽しみにしていた欧州教育視察が始まりました!
10時間を超えるフライトは人生初の体験でした。今どこを飛んでいるのか、フライトマップを確認するのもおもしろかったです。

夕方からはグループに分かれて観光タイム。私は地下鉄でキングズクロス駅へ向かい、9と3/4番線にて、ハリーポッターの世界を楽しみました。

キングスクロス駅、グリーンパーク駅と散策してみると、街並みを味わうことができました。

散策でお腹が空いたということで、「今から3つ目の駅で降りてみよう!」と飛び込んだ先でフィッシュ&チップスのお店を探し、ビール片手にロンドンの夜を楽しみました。

そこで地元の人と交流もあり、お店を出る時には「Remember it!」と言われながら拳と拳を合わせて挨拶して別れました。これからの出会いも楽しみになる1日となりました。
(松本奈月)


※本事業は、信州大学教職大学院の授業「海外学校臨床実習」(隔年・2単位)として、信州大学知の森基金を活用したグローバル人材育成のための短期学生海外派遣プログラムの助成を受けて実施されています。

2019年10月10日木曜日

研究紹介: 教育省をアウトソースすると発表したリベリア

林寛平「比較教育学における『政策移転』を再考するーPartnership Schools for Liberiaを事例に―」日本教育学会(編)『教育学研究』第86巻第2号, 2019, pp.213-224.


本文はこちらからご覧いただけます。

キーワード:比較教育学、政策移転、教育の輸出、Partnership Schools for Liberia (PSL)、グローバル教育政策市場

 教育の輸出および輸入の発生と進展により、比較教育学は新たな現象に直面している。従来、比較教育学は「政策移転」や「政策借用」の概念を用いて議論を行ってきた。Cowen(2006)は政策移転を移転、トランスレーション、トランスフォーメーションの3つの段階に分けている。政策移転が行きつくところは、初期のトランスレーションが土着化するか、逆に絶滅するというトランスフォーメーションの段階であるが、教育の輸出・輸入においてはトランスレーションが本質的に疎外される。それは、輸出側の優位性を保持し、利益を確保し続けるためである。

 本稿では、Partnership Schools for Liberia (PSL)の事例を用いてこの新しい現象を描き出す。PSLは公立の幼稚園と小学校を営利団体を含む非政府系アクターに外注する試みである。これらのアクターのほとんどは外国に拠点を置いている。PSLの目的は、第一に、非国家の運営者を選択・委託・契約し、94の公立小学校を運営させ、読解と算数においてより高い学習成果を導くこと。第二に、教育省がPSLの学校を委託し、規制し、質を保障する役割を効果的にできる能力を築くこと。第三に、PSL学校の成果(質、費用効果、公平)を伝統的な公立校との比較によって測り、厳格な外部評価を実施することである。

 この事例について3つの論点を挙げる。第一に、PSL学校は公正を期するために複数の団体に外注されている。しかし、現実には、これらの団体は資金のフローと個人的関係によって相互につながっていることが分かった。第二に、リベリアの教育省は3つの目的それぞれについて外国を拠点とした団体に外注している。このことは、リベリアの文脈において土着化することを構造的に難しくしている。教育大臣の構想は「全国のすべての地区の公立学校をトランスフォームし、すべての子どもに機会を提供する」ことであったにもかかわらず、PSL学校のコントラクターが土着化の度合いを意図的に統制できる力があった。第三に、教育の技術や方法において先進的な国の団体に外注することにより、PSL学校はリープフロッグ現象を経験している。リベリアは明らかに教育の量的拡大の段階であるにもかかわらず、「パッケージ化された学校」を「購入」し外部評価を実施することにより、量的拡大の段階を飛ばし、質評価の段階に直接移行している。これは他国が経験していない状況である。

 最後に、比較教育学の理論に照らして再考および省察すると、リベリアの事例はトランスフォーメーションの段階を持たない新しい形の政策移転であると指摘できる。比較教育学は、教育の輸出入において「パッケージ化された学校」を購入するという事象を分析するための枠組みを構築し精緻化する必要があろう。



Rethinking Policy Transfer in Comparative Education: 

The Case of Partnership Schools for Liberia


Kampei HAYASHI (Shinshu University, Uppsala University) 

Full paper is here.

Key words: Comparative Education, Policy Transfer, Education Export, Partnership Schools for Liberia (PSL), Global Education Policy Market 

With the emergence and growth of the education export and import practice, comparative education is facing a new phenomenon. Conventionally, comparativists have discussed issues with the concepts of ‘policy transfer’ and ‘policy lending/borrowing’. Cowen (2006) divided policy transfer into three stages: transfer, translation, and transformation. Policy transfer in education had the ultimate process of transformation, where the original translation became indigenous, or conversely, extinct. However, in the case of education export and import, policy transformation is inherently avoided, mainly to maintain the superiority of the export side and thus secure profit from the trade. 

This new phenomenon is illustrated in this paper through the case of the business of the Partnership Schools for Liberia (PSL). PSL is an attempt to outsource governmental preschools and primary schools to non-state actors, including for-profit organizations, who are mostly foreign-based. PSL’s aim is to ‘1) select, commission, and contract non-state operators to run 94 public primary schools, leading to higher learning outcomes in literacy and numeracy; 2) build the capacity of the Ministry of Education to effectively play the role of commission, regulator, and quality assurer to PSL schools, and 3) conduct a rigorous external evaluation to measure the performance (quality, cost-effectiveness, equity) of PSL schools in comparison with traditional public schools’.

Three issues are raised through this case. Firstly, to secure fairness, PSL schools are outsourced to several organizations, however, the reality is that the actors are overlapping and interrelating in terms of monetary flow and personal relationships. Secondly, the Liberian government outsources all three areas of PSL’s aims to foreign organizations, and this creates structural difficulties for indigenisation in local context. Despite the Education Minister’s ‘vision for transformational public schools in every district across the country, providing access to every child’, PSL contractors have the power to intentionally control the degree of indigenisation. Thirdly, by outsourcing to different actors whose countries have reached far more advanced technology and methodology in education, PSL schools experience leapfrog phenomenon. Following the ordinary development process, Liberia is clearly in the phase of quantitative expansion. However, by ‘buying’ a ‘school-in-a-box’ product and doing an external evaluation based on student performance, PSL schools skip the phase of quantitative expansion, and move directly to the quality evaluation. This is a unique case. 

Finally, by rethinking and reflecting on the framework of comparative education theory, the case of Liberia is defined as a new type of policy transfer that lacks the transformation phase. It is a challenge for comparative education to refine and develop an analytical framework to analyse cases in education export/import, where a country carries out ‘buying’ a ‘school-in-a-box’ policy.